漆はこんなところだった
乾いた雑巾を絞るがごとく、新たなツーリングのネタなどもう出てきそうにもないのですが、さらに絞ればところどころポツンとネタが転がってたりもします。何となく地図を見ていると気になる場所というものがあるものです。それは地形であったり、地名であったりします。特に山の中に忽然と現れる集落には何か惹かれるものがあります。
そんな場所が一つありました。名松線の伊勢八知駅の東方にある「漆」という集落がそれです。四方を山に囲まれ、そこへ行くにはどこからも峠を越えなければならず、まるで人目を避けるようにひっそりと存在しています。しかも漆という地名は何か曰くがありそうで非常に気になります。こういう場所はたとえば和歌山県かつらぎ町の天野などがそれに当たりますが、いわゆる「隠里」であるに違いないと思われるのですね。こういう場所を見つけると実際に行って確かめてみたいと思うのが人情ではないでしょうか・・
スタートはいつものように伊勢奥津駅。名松線の終着駅ですが、奈良からは1時間半足らずで来られますので案外近いのです。10:20に出発し、県道15号を八知方面へ進みます。
県道15号は雲出川に沿ってゆるやかに下ります。対岸は名松線の線路。
名松線は相変わらずこんな状態ですが・・
八知で逢坂峠からの道と合流し、役場を過ぎたところの「森」の橋を渡ります。ここから林道八知下之川線が始まります。
この林道は地形図上では黒線で描かれていますが、そこそこ幅があって路面も比較的きれいです。それでいて車は全く通りません。峠の西側はトラバース気味ですから勾配は比較的緩やかで、フラットな部分も少々あります。
3分の2ほど上ってきたところで少し展望が開けます。青山高原の風車もちらっと見えました。
1時間ほどかかって漆方面との分岐点に着きました。ここで標高570mです。八知から400mほど上ってきましたが、勾配はそれほどきつくないので割と楽な上りです。ここまでは一度来たことがありましたが、この先は未知のルートになります。
分岐を右に曲がって漆方面へ向かいます。大したことはないですが、2度上り返しがあります。よく手入れされた杉林の中を抜けていきます。
2度目のピークを過ぎると下りとなり、漆の集落の端に出ます。まあ別にどうってことのない普通の集落ですが、人影もまったく見えず、時間が止まったかのように静まりかえっていました。特徴を一つ挙げれば、民家の屋根がすべて黒いということでしょうか。光沢のある瓦屋根ではなく、真っ黒な艶消しトタン屋根なのです。このことはGoogleマップの航空写真からも見て取れます。漆という地名から連想される「黒」のイメージが強く焼き付いたのでした。
漆の集落を後にして比津峠へ向かいますが、その前に50mほどの上り返しがあります。そしてピークを過ぎるとすごい激坂になり、標高差100m以上をあっという間に下ります。つまり漆の集落はこんな険しい峠の向こう側にあるのですね。他にもルートは2つほどありますが、いずれにせよ急な峠を越えなければ入れません。まさに隠里そのものです。
激坂が終わると県道666号の比津峠に出ます。そして緩やかに下って下多気に出てきます。
県道30号に入って北畠神社の前を通り、上多気の交差点へ。この時点でまだ1時前。このまま飼坂トンネルを抜ければあまりにも短すぎますので、もう一発峠いっときます。
上多気の交差点を直進してR422に入ります。この道は庄司峠の手前で行き止まりになっていますが、それにしては案外交通量があります。丹生俣の人口がかなり大きいようです。
上多気から2kmほど進み、「平生」のバス停があるところを右へ入ります。
少し進むと西俣の集落、立派な蔵が建っています。
西俣の集落から橋を渡ると林道杉線に入ります。最初はゆるやかに上り、最後は直線上りでちょっとしんどいですが、あっけなく杉トンネルに着きます。ここで標高470m。以前反対側から上ったことがありましたが、こっちからの方がずっと楽です。杉トンネルは長さ414mで照明はなし。
川上側の下りはかなりの激坂です。幾何学的に設計されたヘアピンカーブを何度も繰り返して急降下。新設林道なので路面はきれいですが、やはり落石は多め。しかしこの道も存在意義がほとんど感じられないですなぁ・・
坂が緩やかになると間もなく川上の集落に到着。こちら側の道は若宮八幡宮まで続いていますが、その先はやはり行き止まり。急峻な三峰山脈が障壁になっているのです。
県道695号を下って午後2時に伊勢奥津駅に帰ってきました。まだ時間は早いですが、2時を過ぎるともう夕方の雰囲気、気温も急速に下がってきますね。行動時間がだんだん短くなってくる時期に入りました。
走行距離:35.0km
平均速度:15.4km/h
体重:57.8kg
コメント
比津峠は、車や自転車で何度も通っていますが、漆側へハンドルを向けた事がありません。
周回する時のコースの一部として使えるのですね。情報感謝です。
熊鈴は付けていかなかったのですか?出会わなくて良かったですね・・・(^^ゞ
杉峠は sora さんの峠案内で知って二度通りましたが、
私は川上側から登るのが楽しかったような気が・・・(^_^;)
@影武茶 さん
あの林道は熊出そうで怖かったです。(^^;
杉峠は川上側からの方が上り応えはありますね。坂バカ向きです。(笑)