自転車旅行と自転車付き旅行の違い
自転車旅行の定義は人によって多少ニュアンスが違うかもしれませんが、自分の中では「自転車だけを使って1泊以上して帰ってくること」と考えています。ここでは前後に輪行したりすることは問いません。肝要なのは「自転車単独で宿泊すること」という点です。
それに対して、車中泊しながら(別に宿に泊まっても構いませんが)移動先で自転車に乗ることを「自転車付き旅行」と呼んでいます。それは自転車旅行とは根本的に異なるもので、明確に区別しなければなりません。なぜなら自転車単独で宿泊していないからです。実質的には出発地点が移動しただけで、自宅から発着する日帰りライドと何ら変わりません。
思い返せば記録に残る限り、自転車旅行をしたのは2008年の四国ツーリングが最後だったと思います。フェリーと輪行を組み合わせて愛媛から高知、また愛媛へと4泊5日で走りました。それ以来自転車旅行から遠ざかり、もっぱら車中泊を利用した自転車付き旅行を15年も続けてきました。自転車旅行というものは久しくしていないので、もうやり方すら忘れてしまいました。
なぜ自転車旅行をしなくなったのか? 一つにはめんどくささがあります。自転車旅行をするには宿の予約、切符の手配、荷物の準備など、やることがたくさんあります。急に思い立って実行することがなかなかやりにくいのです。
それに対して自転車付き旅行は手軽です。いつ出発していつ帰ってもいいし、宿の予約も要りません。雨が降ろうが関係なし、気分次第で行先も自由に変えられます。荷物も自分で持つんじゃないから、重さとか考えなくても適当に放り込んでおけばいいだけなんですよね。自転車旅行に比べて何と気楽なことでしょうか。
しかし最大の理由は財政難でした。自転車旅行というものはものすごくお金のかかる贅沢な趣味なんです。考えてみてもわかるでしょう。往復の交通費に加えて宿泊費。ちょっとした小旅行でも軽く3万は飛んでいきますよ。財政難で生活苦に喘いでいるときにそんな余裕はとてもありませんでした。
それに対して自転車付き旅行は安上がりなんです。何泊しようが宿泊費はタダ、あとはガソリン代と食費、風呂代くらいしかかかりません。とにかく長く旅行することが半ば目的化していましたね。自転車旅行とは裏腹に自転車付き旅行は貧乏人の趣味なんです。そんなわけで財政難を理由に自転車付き旅行しかできなくなっていたというのが実情です。
自転車付き旅行は飽きる
しかし自転車付き旅行を15年もやっていると、だんだん行くところがなくなって飽きてきます。よく定年退職したら自転車積んで車中泊しながら全国を走り回りたいと憧れる人がいますが、楽しいのは最初の数年だけですよ。10年もやったら絶対飽きます。経験者の僕が保証します(笑)。
なぜ飽きるかというと、結局車を停めた場所に戻ってこなければならないからです。それは本質的に日帰りライドと変わりません。自転車ツーリングの醍醐味って、移動することにあると思うんですよね。しかし自転車付き旅行だと必ず戻ってくるわけだから1メートルも移動してないわけですよ。それが面白くないし、効率が悪すぎる。
もちろん自転車旅行だっていずれ戻ってくることには違いありませんが、そこには時間的間隔というものが介在します。たとえ1晩でも移動先で滞在することにより、翌日はまた新たな気持ちで旅を再開することができるのです。つまり宿泊を挟むことにより、時間の連続性を分断することに意味があるのです。だから出発地から目的地へと移動する楽しさを存分に味わうことができます。
「移動」を楽しみたい
自転車付き旅行に行き詰まった結果、再び自転車旅行に目を向けるようになったのはそういうことです。別に目的地はどこでもいいんですよ。先に泊まりたい宿を決めておいて、そこへ行くための手段として自転車を使う。それでいいんですよ。できれば行きと帰りでルートを変えれば往復で移動を楽しめるわけでしょ? 別に観光なんてしなくてもいいんですよ。ただ行って帰るだけで楽しい。そのことに気づくまでにずいぶん時間がかかりました。
もちろん自転車旅行はとてもお金がかかります。それを再びする気になったのは家賃が要らなくなったからです。今まで家賃を払っていた分を旅費に注ぎ込んでも余ります(笑)。歳を取ったらもうお金を残しても意味がないんですよ。やりたいことを我慢して貯金に精を出すのは愚の骨頂。そのお金、いつ使うんですか? お金なんて生きてるうちしか使えないんですから。
自転車旅行の課題は荷物の積載
自転車旅行が日帰りライドと本質的に異なるのは荷物が飛躍的に増えるということ。たとえ1泊であってもそれは同じ。着替え、雨具、日用品など日帰りライドでは必要のなかった物が一気に増えます。問題はそれをどうやって積載するか?ということ。
最も理想的には自転車にキャリアを装着してパニアバッグなどを利用する方法ですね。そうすれば体には一切負担がかからないので楽と言えば楽です。ただそこまでやると日本一周みたいなスタイルになって大げさすぎますね。短期の旅行でそこまで荷物は不要でしょう。それにこれをやると輪行ができない、または非常に困難という問題があります。まあ絶対に輪行はしないという固い意志が必要ですね。
逆に自転車には荷物を積まず、全てリュックで背負うという方法もあります。ロードバイクだとほぼこういう形になりがちですね。ただこれはあまり重い荷物を背負うと地獄になります。確実に腰が痛くなってきます。もちろん体の動きも制限されるのでパフォーマンスの低下は避けられないでしょう。
過去の旅行ではどうやっていたかというと、まずフロントバッグによく使う物を詰め込み、衣類や日用品はリュックで背負っていました。そしてリアに簡易キャリアを付けて輪行袋と雨具をくくりつけていましたね。ただこの方法でもフロントバッグが3kg、リュックが3.5kgもあり、相当キツかったのを憶えています。これはもう荷物が多過ぎと言わざるを得ません。ここまで荷物を積むと体に負担がかかってパフォーマンスは大きく低下しました。
荷物は徹底的に軽量化を図る
過去の反省から、荷物の見直しが必要という結論になりました。荷物を増やせば自分がしんどくなるだけだからです。「ひょっとしたら使うかも?」「あれば便利」という物は置いていかなければなりません。本当に必要なものだけを厳選して徹底した軽量化を図りましょう。
日数に関係なく自転車旅行に必要なものは以下の通りです。
・サイクルウェア(着替え含む)
・部屋着
・下着類
・タオル
・雨具
・アメニティー類
・貴重品
・工具類
・予備チューブ
・輪行袋(小物含む)
このうちサイクルウェアの着替えはどのくらい持つか?は悩むところでしょう。日数分用意していたらそれだけ重くなってしまいます。今のように寒暖差が大きい時期は着るものに悩むので、どうしても多くなりがちですね。しかしここは割り切りが必要です。慣れた人は着替えは一切持たないという人もいます。全て宿で洗って干しておけば一晩で乾くと言います。しかしレーパンはパッドがあるので乾きにくく、洗い替えに1枚は必要と思います。ジャージも念のため洗い替えを持っておいた方がいいでしょう。寒暖差の大きい時期や標高の高い場所に行くときはウィンドブレーカーも必須。逆に夏場は半袖ウェアだけで済むので大幅に軽量化できる可能性があります。
部屋着は宿に着いてから部屋で過ごす、あるいは外出する時のための着替えです。最低限、シャツ1枚とパンツ1枚。タオルはお風呂に入るときに必要。これもホテル・旅館なら備え付けの浴衣やタオルがあるから要らないのですが、ゲストハウスやユースホステルにはないので自分で持っていかなければなりません。中には寝る時もジャージ・レーパンで平気という強者もいますが、さすがにそこまで真似できないなぁ(笑)。夏ならTシャツ1枚と短パン1枚で済むので大幅な軽量化になります。ライド中もレーパンをやめて短パンスタイルにすれば兼用でさらなる軽量化が可能です。
下着類も1泊なら1枚で済みますが、日数分用意すると意外と重くなります。長期のときは洗濯するなどの工夫が必要でしょう。
アメニティー類は歯ブラシ、歯磨き、髭剃りなど。これもホテル・旅館では不要です。ない場合はできるだけ軽量なものを選ぶ必要があります。それに加えて常備薬などは持っていきます。
貴重品は財布やスマホ、カード類など。さすがにこれを忘れる人はいないでしょう(笑)。ただスマホに付随してモバイルバッテリーや充電器、USBケーブルも必要です。これは意外と忘れやすいので注意。現金も小銭が多いと重くなるので、できるだけ軽量化しておくことが必要です。可能な限りキャッシュレス決済を利用するのがいいでしょう。
工具類や予備チューブは常時自転車に備え付けてあるので忘れることはありません。これもあらゆる事態を想定していると重くなりすぎるので、必要最小限にとどめるべきです。万が一のときは輪行で逃げるくらいの割り切りが必要です。
輪行袋は全く輪行する予定がなくても緊急避難のために持っておいた方が安心でしょう。ただ輪行袋は結構かさばって重いので選択は重要です。万が一のためなら使い勝手より軽量性を優先すべきです。僕はPEKOさんのお手製輪行袋を買いました。ボトルケージにすっぽり入る超小型サイズです。それに加えてベルトやエンド金具などの小物も忘れてはなりません。
この中で装備に入れるか一番悩むのは雨具です。輪行袋と同じで万が一の時に備える保険の意味しかありません。そもそも雨が降りそうな時は絶対行かないので必要ないといえば必要ないのです。登山用のレインスーツは結構かさばるので、それだけでスペースを占有してしまいます。まず使う可能性がないもののためにスペースを制約されるのは本末転倒であると言えます。これまでの自転車旅行では常に雨具を携帯していましたが、一度も使ったことはありません。1泊ならまず雨に降られる心配はありませんが、2泊以上でも天気読みに自信があれば不要です。低気圧が近づいている時は確実に雨が降るので行かなければいいのです。ただ夏の夕立のような局所的な雨は予測が難しいので降られる可能性はあります。でもそういう雨は短時間しか降らないので、1時間も待っていれば止みます。僕はもう雨具を持たないことに決めました。どうしても心配なら、百均のレインコートを忍ばせておけばいいと思います。蒸れるので内側から濡れる可能性が高いですが、土砂降りならないよりはマシでしょう。
実証の設定条件
以上を考慮して、1泊の自転車旅行を想定した実証実験をすることにしました。長らく自転車旅行をしていないので、いきなり本番は不安があるからです。荷物を背負って走ることが可能か、持ち物に過不足はないか、を検証することが目的です。
条件は下記の通りとします。
・時期は春季
・1泊を想定
・ホテル泊だがゲストハウス泊を想定したフル装備
・輪行はしないが輪行袋は持つ
・雨具は持たない
使用したバッグ類
荷物は2つに分散し、サドルバックとリュックを併用します。基本的な方針は、重い物はサドルバッグに入れ、軽くてかさばる物はリュックに入れることにします。
オルトリーブ・サドルバッグ(L)

ここには工具類、予備チューブ、ワイヤー鍵のほか、モバイルバッテリー、予備電池、輪行袋など比較的重い物を入れています。それでもまだ余裕はありました。
モンベル・サイクールパック20

自転車旅行に備えて冬の間に購入してあったものです。サイクリング専用に工夫された設計になっています。これは別にレビューしたいと思いますが、背中の通気性が確保されていることが最大の特徴です。こちらにはサイクルウェアの着替えと部屋着、下着類、アメニティー類、財布、それに充電器・ケーブル類などを入れています。
実測重量はリュック込みで2.85kgでした。過去の経験上、3kgを超えると腰が痛くなって辛いのでこれは合格点です。
実証ライドレポート
今回は実験ということなのであまり遠出はせず、近場のよく知っている道を選びました。距離は片道30km程度、往復で別ルートをとるものとします。まあ一日で走れる距離ですが、そこは実験ということで(笑)。
目的地は三重県名張市のビジネスホテルとします。2日前に予約しておきました。出発地はそこから逆算して南山城村の髙山ダムとします。そこまでは車で移動します。距離は短いですが、京都府・奈良県・三重県の3府県をまたいで移動することができます。
ここで大事なことは、平坦ばっかりのコースだと検証にならないということです。荷物の重さは上りで効いてきますから、坂を登れるかが最大の懸案事項となります。そのためにそれなりにアップダウンのあるコースを選びました。
1日目

スタート地点は髙山ダムにいくつかある駐車場です。家から1時間で来れるので便利です。想定される所要時間は3時間なので、あまり早く着きすぎてもチェックインできません。そのため12時過ぎにスタートしました。

髙山ダムから府道82号を月ヶ瀬方面へ登っていきます。結構なアップダウンです。渇水が酷かった月ヶ瀬湖もだいぶ水位が回復してきましたね。

いつもよく撮る八幡橋の風景。こんな時期に来るのは新鮮だなぁ。

いつも梅を撮っている場所ですが、新緑の時期に来たのは初めてかもしれません。めちゃくちゃ綺麗で感動しました。

県道4号で名張川沿いに進みます。

五月橋まではほぼ平坦なコースです。ここからマイナールートの県道785号に入ります。

県道785号はほとんど交通量がなく、道は荒れています。小刻みなアップダウンはありますが、概ね平坦に近い感じです。

山添村広瀬に出てきました。ここから先、県道80号に合流するまでが最大の難所です。勾配11%の激坂がありました。3kg近い荷物を背負っていますが、難なく登れました。やはりサイクールパックが優秀なのでしょうか、荷物の重さをうまく分散させてあまり重さを感じませんでした。

県道80号に合流して、名張川沿いに下っていきます。新緑が鮮やかで気持ちいい。

名張川は美しい。

対岸の家野にかかる橋。名張はもうすぐです。

大屋戸橋を渡って名張市街に入りました。

午後3時過ぎ、名張市のホテルAZに到着しました。もうチェックイン可能ですけど、やっぱり早かったな。AZグループは九州を中心に展開しているホテルチェーンで、最近全国に新規開店しています。日に関係なく朝食付き5850円とリーズナブル。去年四国で泊まった時より1000円値上がりしましたが、それでも相場に比べると安いですね。よくある食パン無料みたいなのと違ってちゃんとした朝食が食べられるのでおすすめ。自転車に優しいホテルをPRしているので、全店どこでも自転車持ち込み可なのも嬉しい。とても親切にしていただけました。
2日目
帰路は全く重複しない別ルートで帰ることにします。結果的に距離・獲得標高ともにやや少なめのコースになりました。

翌日は8時50分にスタートしました。

県道57号からR368に並行する名張街道を走っていきます。

菖蒲池で左折して県道686号に入ります。この辺は全く走ったことがない。

伊賀市予野あたりで見つけた菜の花畑。

ファミリーマート予野店の角を曲がってさらに県道686号を北上。

名阪白樫インターに出てきました。

名阪国道を越えて岡八幡宮へ。ここは何度か来たことがあります。

県道82号を月ヶ瀬方面へ向かいます。ここから奈良県。なんか伊賀市と奈良市が隣接しているのが感覚バグるんだよな。元は月ヶ瀬村だったんだけど。

石打で右折して知らない道に入ります。この看板の場所でさらに左折すると田山方面へショートカットできるみたいです。

取り付きのところが結構な激坂でしたけど、ピークまで登ってきました。この道は全く初めてで存在すら知りませんでしたが、なかなかいい感じの道でした。

南山城村田山地区まで来ました。和束と並んでこの辺もお茶の産地なんですよね。

そして11時過ぎ、髙山ダムに戻ってきました。疲労感は全くありません。今日のコースはほとんどが初めての道で新鮮な感じがしました。名張と上野の間って意外と走ったことないんですよね。たぶん宿泊しなければ通る機会もないだろうと思います。こんな近い場所でも宿泊すれば旅してる感が出るんですよね。結構やみつきになりそうです(笑)。
結び
今回の検証目的であった荷物を背負っての走行は全く問題ないことが確認できました。平均速度は下がっておらず、激坂も難なく登れます。腰の痛みもなし。過去の事例ではパフォーマンスが大きく下がる印象しかありませんでしたが、それは重量超過が問題だったのだろうと思います。やはり背負い荷物は3kg以内に抑えることが鉄則です。それにサイクールパックの性能も大きいと思いました。背中全体で重量を分散させる構造なので、荷物を背負っている感覚があまりないのです。今は時期的に汗はかかないですが、背中の蒸れは全く気になりませんでした。まあ夏になるとまた印象は変わると思いますが、通気性能はさすがだと思いました。
とにかく快適なライドには荷物の軽量化が不可欠です。余計な荷物は一切持っていかないことを心がけなければと思いました。今回はゲストハウス泊を想定して必要ない荷物も若干持っていきましたが、過不足はなかったと思います。これで必要な持ち物はわかったので、次回から基準にしたいと思います。季節によってはさらに軽量化することも可能でしょう。
今回は片道30kmと短めでしたが、倍の60kmになっても走り切れる自信が付きました。片道60kmといえばかなりの距離感ですよ。昔は折り畳み自転車でやってましたが、ロードバイクの走行性能をもってすればさらに距離を稼げるかもしれません。直線で長い距離を移動するのはワクワク感しかありません。今後は単発で1泊旅行するも良し、自転車付き旅行の合間に1泊旅行を挟むのも楽しいでしょうね。これで自転車旅の可能性が広がりました。目的はあくまでも宿に泊まること、自転車は移動手段でいいんです。
次は輪行の実証実験もやらないといけませんね。

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