輪行は現実的でない

スポンサーリンク
自転車自転車趣味

輪行って久しくやってない気がしますが、記録に残る限り最後に輪行したのは2016年だったようです。それも名松線の復旧を記念して松阪から伊勢奥津まで1時間ちょっと乗っただけ。

この頃はまだ折り畳みのMR-4を持っていたので輪行はしやすかったのですが、それを手放してからは全く輪行しなくなりましたね。もはやロードバイクで輪行など全くする気が起こりません。はっきり言って輪行は大嫌いです。

輪行はストレスの塊

よく自転車雑誌とか最近はYouTubeでも輪行についてたびたび取り上げられますが、どれも輪行を利用すれば魔法の絨毯のようにどこへでも行けて行動範囲が飛躍的に広がるよというメリットしか言わないんですよね。でも聞くのと実際にやるのとでは大違い。一度でも輪行を経験すると二度とやりたくないと思うほど辛いものです。

まず自転車を分解して袋に詰めるのに時間がかかる。その分見越して早めに駅に着かなければなりません。それもしばらくやってないとやり方を忘れたりしてうまく行かない。

そして分解すると自転車を壊すリスクが高まります。折り畳み自転車のように後輪が付いたままだとまだいいですが、後輪を外すとディレイラーが宙ぶらりんになるため床にぶつけたりすると破壊する恐れがあります。縦型輪行袋ではエンド金具が必須になりますが、あれは簡単にズレてしまうので信用なりません。最悪、目的地に着くまでに自転車を壊してしまったらただの重い荷物に化けます。その場で旅は終了です。

まあ分解して袋に詰める手順についてはどこでもクソ丁寧に解説されていますが、問題はそこから先ですよ。なぜかその先には触れたがらないんですよね。やっぱりネガティブ面を表に出したくないからでしょうか。

やっとの思いで輪行袋に収めたら、次は狭い改札をくぐり抜けて、場合によっては階段を登ってホームにたどり着かなければなりません。これがとんでもない苦行。輪行袋の紐が肩に食い込んで痛い。自転車は分解した途端に重い荷物に化けるのです。

そして列車に乗り込んだら今度は置き場所探しです。最近は田舎でもロングシート車が増えて輪行袋の置き場所に本当に苦労します。うまく最後尾の壁などに置ければまだ良い方で、最悪は手で支えながらずっと立っていなければなりません。さらには混んできたらどうしようと常にビクビクしていなければなりません。邪魔にならないか常に気を遣いながら自転車から目を離せないのが本当にストレス。もう生きた心地がしないですね。

最も辛い試練は何と言っても乗り換え。ある程度遠くへ行こうと思ったら必ず乗り換えが待っています。ほとんどの列車は大都市を中心に発着するので、乗り換えのターミナル駅では必ず階段の上り下りがあり、長いコンコースを人混みに紛れて歩かなければなりません。場合によっては接続がギリギリで自転車を担いでいたら間に合わないこともあります。普通の旅行より余計に時間がかかるのが輪行の特徴。乗り換えはもう想像を絶するストレスなのです。こういうことって輪行特集では全く触れられないんですよね。

こうやってやっと目的地に着いたら今度は組み立てなければなりません。まあこれは分解よりは簡単でしょうか。ただし輪行袋をしまうという面倒な作業が待っています。走り出すまで最低15~20分はかかるでしょうか。こうやってようやく自転車の旅が始まるのです。

輪行はスマートでない

輪行という制度は日本独自のもので、もともとは競輪選手が遠征で利用していた方法を一般の人が使えるようにしたものです。最近の人は知らないと思いますが、昔はJCA(日本サイクリング協会)の会員証を提示する必要があったり、手回り品切符を買う必要がありました。自分もさすがにJCAまでは知りませんが、手回り品切符を買った覚えは数回あります。

今では輪行が無料というのは当たり前のように思われていますが、昔はそうではなかったのです。無料化に至るまでにはサイクリングの先人達による地道な努力があったからで、そのことには感謝しなければなりません。

しかし無料化されてからもう20数年が経つのに、輪行のシステムそのものは驚くほど変わってないんですよね。悪い意味で旧態依然としています。相変わらず地方の駅に行くとエレベーターもなくて跨線橋を担いで上がったり、列車内にも専用のスペースというものはありません。それどころか経営合理化によって本数や編成が減らされたり、新幹線の開業に伴う第三セクター化で乗り換えの回数が増えたり、大型荷物置き場の予約が必要になったり、輪行を取り巻く環境はますます悪くなっていると言わざるを得ません。

輪行という形態は駅前で自転車をバラし、重たい輪行袋を担いで長い距離を歩き、車内では置き場所に気を遣わなければならないという三重苦と常にセットなのです。それはスマートさのかけらもない実に泥臭いシステムであり、そういうところが旧態依然としたまま何も変わってないんですよね。

輪行には適した地域と不向きな地域がある

自転車雑誌の輪行特集などで輪行のネガティブ面についてあまり触れられないのは、一つには東京目線だということがあると思います。ほとんどの雑誌編集部は東京に集中していますから、どうしても東京の基準で語られてしまうのです。

実は日本で最も輪行に適した地域というのは東京の都心です。そこに住んでいれば日本全国どこへでもほぼ乗り換えなしで行けてしまいます。しかも人の流れと逆ですから、朝早く都心を出発すれば郊外へ向かう列車は必ず空いています。これは帰りも同じ。したがって東京の都心に住んでいれば輪行に伴う諸々の苦労を味わうことが少なく、輪行は便利だなと言えるのです。

逆に地方に住んでいると輪行はものすごく大変です。長距離列車は必ず東京・名古屋・大阪などの大都市圏を中心に発着していますから、まずそこまで行かなければなりません。しかしたとえ始発で出発したとしても、都会のターミナル駅に着く頃には通勤ラッシュに巻き込まれて人混みの中を輪行袋担いで歩かなければなりません。これがものすごいストレス。

だから奈良のような田舎は絶対に輪行には向いていないのです。僕は昔、神戸に住んでいたことがありましたが、東海道沿線に住んでいると東は米原から西は姫路まで乗り換えなしで行けてめちゃくちゃ便利なんですよ。確かにそういう地域に住んでいれば輪行は利用価値があるなと思います。結局、輪行ができるかどうかは住んでいる地域に依存するのです。

輪行していいのは乗り換えなしの近距離だけ

地方から遠距離へ行こうとすると、何回も乗り換えなければならないので輪行は苦行になってしまいます。それを考えるともうやる気がなくなります。まあ遠距離は車一択ですね。

それに対して乗り換えの必要がない近距離であれば輪行してもいいかなと思います。特に田舎の無人駅から乗ると階段を上がる必要がなく、ホームで分解までできるので非常に楽です。昼間なら車内も空いていますから置き場所に苦労することもない。片道だけ走って輪行で帰ってくるという手段が使えればコースプランの自由度が広がります。

輪行に適した自転車とは?

輪行するには自転車も選ぶと思いますね。確かに7kgくらいの超軽量ロードバイクであれば担ぐのは楽ですが、やはりデカいことには変わりないので車内での置き場所に困ってしまいます。まあこれは空いている列車限定ですね。

輪行と言えばすぐ折り畳み自転車を思い浮かべる人が多いですが、これは必ずしも楽ではありません。一般的な20インチの折り畳み自転車は12kg前後あるのが普通なので、それを担いで歩くのはかなり苦痛です。しかも畳むと長さは半分になる代わりに厚みが倍になりますから、意外と場所を取るんです。実際やってみればわかりますが、20インチだと思ったより大きくて置き場所に苦労します。

そうすると最も輪行に適しているのは14インチくらいのコンパクトな折り畳み自転車ということになりますね。最近は9kgを切るモデルも出てきましたから、そういう車種であればあまり気を遣わずに楽に輪行することができそうです。ただし車輪径が小さいということは走りません。それで長距離を走るのは厳しいという問題が出てきます。まあ近郊のポタリング程度ならいいのですが、長距離を走ろうとすると結局は体力強者にしか不可能な領域になってしまいます。

サイクルトレインの普及に期待

上でも述べたように、輪行というシステムは驚くほど旧態依然としていて、もはや時代遅れの感を否めません。何でも手軽で便利がもてはやされる世の中、重たい輪行袋を担いで歩くのはどう考えてもスマートじゃないでしょう。

輪行という制度は日本独自のもので、海外では自転車をそのまま載せるのが当たり前です。まあ日本のように人口密度の高い国では難しいのはわかりますが、車依存の社会を少しでも変えていくためには国全体で取り組まなければならないテーマだと思います。

自転車をそのまま載せられたら何が良いかというと、分解・組立の手間が要らないのはもちろんですが、自転車は転がせば荷物になりません。そしてバラさなければ壊す心配もありません。初心者にとって分解して輪行袋に収めるのはハードルが高いんですよね。それがなくなればサイクリストだけでなく一般の自転車利用者も鉄道を利用できるようになります。鉄道を利用したいと思っても、駅に着いてからの交通手段が問題なんですよね。それで田舎では結局車に頼らざるを得ないのです。

最近は少しずつではありますが、地方のローカル線を中心にサイクルトレインを導入する動きが広がっていますね。各地で試験的に実証実験が行われ、導入に向けて検討が進められています。しかし、いまいち周知が足りないように思いますね。それで結局あまり利用されないまま立ち消えになってしまうケースも見受けられます。

こういうのは制限を厳しくすると絶対ダメなんですよ。利用できる日、利用できる列車、乗降可能な駅を細かく制限したり、さらに予約が必要となると誰も利用しなくなります。ただでさえ本数の少ないローカル線でさらに制限をかければどうにもならないでしょう。それで結局需要が少ないからやめておこうということになるのです。

自分が知っている中で最も成功したサイクルトレインは和歌山のきのくに線サイクルトレインだと思います。自分も何度か利用していますが、利用可能な区間は御坊~新宮とかなり長い上、利用制限は朝の通学時間帯を除くというただそれだけ。曜日に関係なく、どこの駅からでも利用できて、しかも予約不要で無料という夢のようなシステムです。サイクリストだけでなく、地元の買い物客も結構利用しているので、完全に生活に溶け込んでいる感があります。サイクルトレインはそこまでやって初めて成功と言えるのです。

殺人的な混雑が常態化している大都会で同じことをやれというのはまだまだ無理がありますが、せめて有料の長距離列車だけでも専用スペースを設けるなどしてサイクルトレインを普及させていってほしいものです。

スポンサーリンク
SORAをフォローする

コメント

  1. Pitian Zizhang より:

    輪行は無料化と同時にJR東日本がPanasonicに企画を持ち込んだ
    初代トレンクル6500に勝る物はないと思います。
    慣れたら折りたたみ収納に1分かかりません。
    輪行通勤も数年続けたことがありますが、
    メリットは大きかったと思います。

    サイクルトレインは列車を限定して
    試験運行した途端、
    駅の無人化につけ込んで、
    剥き出しの自転車を勝手に
    持ち込む不心得者が出てきてしまうのが問題ですね。
    昨年は2件見かけました。

  2. nonki より:

    輪行について、おっしゃること、まったく同感です。私の済んでいる紀北も通勤ラッシュが常にあり、輪行には不向きです。
    遠距離のアプローチは往復カーサイというのは常識ですね。
    サイクルトレインで帰路だけ、駐車場まで戻るというのが常套手段です。
    今後、新宮以北の地域のサイクルトレイン化に期待感大ですね。

  3. SORA より:

    トレンクルって昔ありましたね。今はだいぶ高値で取引されてるみたいですが。
    やはりコンパクトになる折り畳み自転車は需要があるんですよね。まあ駅から数キロ以内の移動ならそういうのでいいんです。

    サイクルトレインは利用ルールの周知徹底が大事ですね。それは輪行も同じなんですが。

  4. SORA より:

    地方の県庁所在地でないド田舎に住んでいると、まず県の中心駅で第一関門があります。そして次は大阪などで第二関門。それまでにエネルギーを使い果たしてしまいますわ。

    新宮以北はつながってほしいですね。御坊~和歌山はどうなったのかな? せめて有田くらいまで延ばしてほしいものですが。あと和歌山線は昼間だけでもサイクルトレインにならないかなぁ?