VueScanっていうソフトをご存じでしょうか?
画像処理の分野では有名なソフトなのかもしれませんが、恥ずかしながら今まで知らず、こちらのブログで初めて知りました。汎用のスキャナドライバという位置付けですが、正確に言うとドライバではなく直接スキャナを操作する単体のアプリケーションです。国内外で販売されたほとんどのフィルムスキャナ/フラットベッドスキャナに対応する上、WindowsだけでなくMacやLinuxにも対応しています。特にLinuxで画像処理をやりたいと思っている方にはこれしか選択がありません。また古いスキャナでメーカー純正のドライバが入手できない場合にも重宝します。
ソフトはメーカーのサイトからダウンロードできますが、残念ながらフリーソフトではありません。未登録の状態ではスキャンした画像に”$”マークが入るため事実上使えないようになっています。制限解除するにはスタンダード版で$39.95、プロ版で$79.95を支払う必要があります。いずれもクレジットカードで支払いが可能です。
しかし性能を試すだけなら未登録でもできますので、手持ちのネガをいくつかスキャンして評価しました。その結果、「これは使える!」と確信できましたので、早速$39.95を払ってスタンダード版を購入しました。プロ版との違いはRAW保存ができないとか、バージョンアップが1年以内といった制約がありますが、普通に使う分にはスタンダード版で十分でしょう。
これまでスキャナに付属している純正のNikonScanを使っていましたが、ネガのスキャンにはいつも悩まされてました。どうやっても変なクセが出てしまい、すっきりした色合いにならないのです。ネガのスキャンが難しいのには理由がありまして、フィルムに一様についているあのオレンジ色が曲者なのです。現像済みのフィルムをいくつか比べれば気付くと思いますが、オレンジベースの色はメーカーや銘柄によって微妙に違っています。スキャナドライバでは実際どうやって補正しているのか知りませんが、おそらく平均的なオレンジベースの色をもとに補正しているのでしょう。ですからフィルムの銘柄によってクセが出てくるのは避けられないのだと思います。
VueScanのすばらしいところは、フィルムの銘柄ごとにオレンジベースのデータを持っていることです。現在市販されているフィルムなら銘柄を選ぶだけで適切な色補正が可能となります。残念ながらDNPセンチュリアには対応してないのですが、その場合も心配は無用です。リーダー部の未露光部分をスキャンしてオレンジベースの色を記憶させることにより、以後はそのデータに基づいた色補正が自動的に行われます。登録済みの銘柄でもこの方法を使う方がより正確でしょう。
この方法でDNPセンチュリア200をスキャンしてみたところ、すばらしい結果が得られました。最も顕著な効果が得られた写真について、純正ドライバと比較した結果を示します。
こちらは純正のNikonScanでスキャンしたものです。どういうわけかこの写真だけ極端に奇妙な色調になり、背後の山は青っぽく色着き、空も真っ白に飛んでしまっています。どのように補正してみてもまともな色調にはなりませんでした。
こちらがVueScanでスキャンしたものです。非常に自然な色調で、山も青くなってませんし、空も飛んでません。これが全く補正なしでそのまま出てきたのですから驚きです。
写真によってはあまり差が出ない場合もあるのですが、VueScanはどんな場合でも無補正で安定した結果が出るのが強みです。やはりオレンジベース色記憶の効果が出ているようです。得られた画像のヒストグラムを見ても、スキャナの性能をフルに引き出していることが窺えました。
その他、ゴミ除去機能のあるスキャナでは自動ゴミ除去もできますし、粒状性軽減の機能もあります。Nikonのスキャナはフィルムの粒子を拾いやすいのでザラザラしがちですが、この機能を使えばかなり自然に粒状感を減らすことができました。ディテールが失われることもほとんどなく、自然な仕上がりです。しかも3段階に強度を調整できます。これなら常時オンにしておいてもよいと思いました。純正ドライバと違ってスキャンが極端に遅くなることもありません。
とにかくVueScanはすばらしいです。もっと早く知ってれば・・と思いました。これならカラーネガも躊躇なく使えそうです。スキャンで悩んでいる方にはおすすめですよ。