前々回eTrexについて書いたのはこれを書くための前フリでした(笑)。前にも書いたようにeTrexはナビゲーションシステムとしては優秀なんですが、サイコンとしての機能は物足りないところがあります。個人的にはstravaにアップできないことと、ケイデンスセンサーが使えないことが最大の不満点です。これを両方満足するためにはサイコンと併用するしかありません。
ただeTrexとサイコンを両方付けようとするとハンドルバーの奪い合いになるため、アクセサリーホルダーを利用して場所を確保する必要があります。しかしそれをやると重くなる上に見た目もゴチャゴチャして美しくありません。一度やってみましたが、あまりにもかっこ悪いので思いとどまりました。
したがって、現状では地図が必要な時はeTrex、地図が要らない時はサイコンというように排他的に運用するしかないのです。もしこの2台を1台にまとめようとするならば、Edgeのような地図が表示できる高機能なサイコンを導入するしかありません。まあGarminは高くて買えないのでBrytonかiGPSPORTになりますが(笑)。
もしくは自転車にはeTrexだけ付けておいてナビとして利用しながら、ログ取りやstravaへのアップロードはスマートウォッチで行うという方法です。実際、今の自分はこの方法を採用しています。この方法なら心拍数も同時に記録できるという副次的なメリットもあります。
一昔前ならサイクリングの様々なデータを記録するにはサイコンを装着するしかなかったのですが、最近ではスマートウォッチが非常に高機能になり、性能的にもサイコンに匹敵するようになっています。そうなるともはやサイコンさえ不要になり、スマートウォッチで代用すればいいという考え方も出てきます。
僕のようにeTrexとスマートウォッチを併用しているのはやや特殊な使い方かもしれませんが、ほとんどの人がスマホを持っているので地図はそれで見れば済む話です。あとはstravaにアップするために必要なログ取りや心拍計測をどうするかです。これはサイコンでもスマートウォッチでもできるし、それぞれに一長一短があります。これから買うならば必ずしもサイコン一択というわけではなく、使用目的によってはスマートウォッチの方が好都合なケースもあると思います。そこでさまざまな観点からサイコンとスマートウォッチを比較して、どちらが有利かを評価してみます。
視認性
サイコンはハンドルバー付近に取り付けるため、比較的視線移動が少なく走行中に見やすい位置にあります。また画面が大きく一度に表示できる情報量が多いため、データの一覧性に優れています。一般的には8~10個程度のデータを同時に見られることが多いです。
それに対してスマートウォッチは腕に着けているため、ロードバイク乗車中は隠れて見えづらくなります。長袖ウェアを着ているとなおさら見えません。しっかり見ようと思えば腕を上げる必要がありますし、常時表示できないタイプのスマートウォッチでは手首を返す動作も必要になり、さらにひと手間かかります。画面も小さいですから、一度に表示できるデータはせいぜい4~5個程度に限られ、それ以上は切り替え操作が必要になります。
したがって走行中にリアルタイムでデータを確認する目的にはサイコンが圧倒的に有利といえるでしょう。
精度
昔はアメリカのGPS衛星のみを使用していたため精度があまり高くありませんでしたが、最近はほとんどの機種で2モード以上が併用されているため、精度は飛躍的に向上しています。少なくとも水平精度に関してはどれも似たり寄ったりで、一概にサイコンだからスマートウォッチだからと一括りにして優劣を語ることはできません。おそらくは使っているチップは同じようなもので、あとはメーカーごとのアルゴリズムによって多少の差が出るのだろうと推測します。見通しの良い場所での差はないに等しく、あとは林間やビルの谷間など電波の悪い場所で多少の差が出る程度です。
しかし標高に関してはかなりバラツキがあり、特にスマートウォッチは良くないと感じています。スマートウォッチの中には気圧高度計を持たない機種もあり、そもそも高度表示ができない場合もあります。気圧高度計があったとしても校正がうまく行っていない場合は数十メートル程度の誤差が出るのが普通で、追従も遅れがちです。本体サイズの問題もあるのかもしれませんが、標高に関してはやはりサイコンの方が精度が高く、特にGarminは非常に優秀です。
ただスマートウォッチの標高精度が悪い場合でもstravaにアップしてしまえば自動補正が効きますので、実用上は問題ありません。コース状況によっては獲得標高が多少盛られてしまう程度の問題です。
あと意外と気づかないのですが、サイコンは自転車に装着しているのに対し、スマートウォッチは常に身に着けているという違いです。このためスマートウォッチでは自転車を降りて歩いた時もカウントされてしまい、平均速度が下がります。店に入ったりすると電波が途切れてログが乱れることもあります。自動ポーズ機能を使ってもこの問題は避けられないので、厳密なデータを要求する場合はスマートウォッチは向きません。
センサーへの対応
初期のサイコンはスポークに取り付けたマグネットとセンサーによってスピードを検出していましたが、今のGPSサイコンは衛星からの測位データをもとに距離やスピードを算出するので、それだけならばセンサーは一切必要ありません。ここまではサイコンもスマートウォッチも同じ。
しかし心拍データを取ろうとすると、サイコンでは必ず胸に巻く心拍センサーが必要になります。使ったことがある人はわかると思いますが、あれはきつく締めると苦しいし、緩すぎるとずり落ちてくるし非常に鬱陶しいものです。その点スマートウォッチならば手首で測る光学式センサーが内蔵されているため、センサー自体が不要で体への負担も少ないものです。僕がスマートウォッチを使う理由はまさにこれなんですね。あの鬱陶しい心拍ベルトは着けたくありませんから。確かに精度的には心拍ベルトの方が優れており、光学式はタイムラグがあったり時々おかしな数値を示すこともありますが、よほどシビアなトレーニングをしない限り十分な精度は得られているので、実用上はこれで問題ないと思っています。
ケイデンスセンサーについてはほとんどのサイコンが対応しているので、ANT+規格に対応しさえしていればどこのメーカーのセンサーでも使えます。しかしスマートウォッチではケイデンスセンサーに対応しているのはGarminの一部機種に限られ、普通は対応していません。どうしてもケイデンスが取りたければ高価なGarminウォッチを買うしかないので、高機能サイコンと変わらない値段になってしまいます。まあケイデンスなんて一部のガチ勢以外にはなくても困らないと思いますが。
あとパワーメーターに関してはミドルからハイエンドクラスのサイコンとGarminの一部スマートウォッチのみが対応しています。安価なサイコンや普通のスマートウォッチでは使えません。まあパワーメーター自体が高価なので、そこまでやるような人は初めからGarminのハイエンドサイコンを使っているでしょう。
その他、気温センサーはほとんどのサイコンに内蔵されていることが多いですが、スマートウォッチで内蔵しているものはほとんどありません。気圧高度計もほとんどのサイコンは内蔵していますが、スマートウォッチの一部には内蔵していないものもあります。購入するときはスペックをよく確かめた方がいいでしょう。
センサーへの対応状況という面ではサイコンの方がかなり優位ですが、問題は心拍センサーです。あの鬱陶しさに耐えられるならサイコンを選んでも問題ないと思いますが、絶対嫌ならスマートウォッチにすべきです。ケイデンスは取れなくても心拍さえ取れれば実用的には十分だと思うからです。
トレーニング機能
サイクリングに限らずスポーツ全般で用いられるパフォーマンス指標として、心拍ゾーン分析、VO2MAX、トレーニング効果、トレーニング負荷、回復時間などがあります。これらはミドルクラス以上のサイコンなら普通に搭載されており、一部のアスリート向けスマートウォッチでも測定可能です。
それ以外のサイクリングに特化した機能としては、ケイデンス分析、パワー分析、FTP、PWRなどがあります。これらはミドルクラス以上のサイコンには搭載されていますが、スマートウォッチで対応するものはGarminの一部機種に限られます。もとよりパワーメーターがないと使えない機能なので、ガチ勢以外には無用といえるでしょう。
したがってパワーメーターまで持っているようなガチ勢にとってはサイコン一択でいいと思いますが、ゆるポタ勢にとっては心拍さえ取れれば十分なので、別に安価なスマートウォッチでも構わないと思います。
ナビ機能
地図が表示できるミドルクラス以上のサイコンならナビ機能を搭載しており、stravaなどであらかじめ作成したルートに沿って道案内をさせることが可能ですが、エントリークラスのサイコンではナビ機能が全くないか、あっても地図なしというものがあります。これはそこまで必要とするかによって選べばいいと思います。
一方、スマートウォッチでナビ機能を搭載したものはほとんどありません。WearOSを採用した高機能モデルではGoogleマップなどが利用できるようですが、何より画面が小さいですからほとんど役に立たないと思っていいでしょう。バッテリー持ちも悪いので実用的ではありません。
したがってナビ機能がどうしても必要ならミドルクラス以上のサイコンを選んだ方がいいですが、ナビはスマホでいいと割り切ればスマートウォッチでも別に悪くはありません。
汎用性
当たり前ですが、サイコンは自転車で使うことを前提としているので他の用途には使いにくいし、使えたとしてもほとんど役に立ちません。また複数の自転車を所有している場合は、それぞれに専用のマウントを取り付けなければなりません。
一方、最近のスマートウォッチは100種類以上ものスポーツに対応したものが多くなってきて、サイクリングのみならずランニングやウォーキングなど、あらゆるスポーツシーンで利用することができます。そもそもランニングのように荷物を持ちたくない場合にこそスマートウォッチが適しているのです。
またスマートウォッチをサイコン代わりに使った場合、自転車には何も取り付けなくて良いというメリットがあります。中には自転車の美観を壊したくないのでサイコンさえ付けるのを嫌がる人もいるでしょう。複数の自転車を所有している場合もマウントを取り付ける必要がなく、着け外しの手間もありません。
最近のスマートウォッチは非常に高機能になっており、心拍や歩数の計測はもちろん、最大酸素飽和度、睡眠分析、ストレスチェックなどの健康管理が可能になっています。基本的に常に身に着けるものですから、時計としてはもちろん、日常の健康管理やスマホの通知受け取りにも利用できます。自転車に乗っている時しか使わないサイコンに比べて利用できる範囲は非常に広いといえるでしょう。
バッテリー持ち
サイコンとスマートウォッチでは本体の大きさにずいぶん差がありますが、GPSを使用した場合の駆動時間は意外と変わりません。どちらも連続20~30時間程度が普通です。したがってログ取りという目的に限定すればスマートウォッチでも十分に実用的です。スマートウォッチの場合、よく20日間使用可能とか謳われていますが、それはGPSを使用しない場合なので注意して下さい。GPSを使用すればサイコンと同程度しか持ちません。
一方でほとんどのサイコンは充電しながら使用が可能ですが、スマートウォッチの場合は充電しながら使用することはできない(腕に着けているからです)ので、20時間を超えるようなロングライドではサイコンが有利になります。
stravaへの対応
市販されているGPSサイコンはどんな安価な製品でもスマホに接続ができてstravaにもアップロードできます。ただ不具合もたまにあるようなので、なるべくならそこそこの値段がするものを買った方がいいです。
一方、スマートウォッチの場合はstravaにアップできるメーカーは意外と限られています。Garminはもちろんですが、他にはApple, WearOS, fitbit, POLAR, SUUNTO, Amazfitなどがあります。逆に言えばそれ以外のメーカーは使えないということです。特に気をつけなければいけないのはスマートウォッチ業界で人気の高いHUAWEIです。HUAWEIはアメリカから閉め出されているのでstravaにもアップできません。したがってstravaへのアップが必須であればHUAWEI製品を選んではいけないということです。
サイコンとスマートウォッチの併用に意味はあるか?
自分はサイコンのようでサイコンでないeTrexとスマートウォッチを併用しているのですが、中にはEdgeなどの高機能サイコンとスマートウォッチを併用している人も割と見かける気がします。それって意味あるのかな?とちょっと不思議に思ってしまいます。というのは、機能がほぼ同じなので蛇足としか思えないからです。もし意味があるとすれば次の2つくらいかなと思いますね。
心拍ベルトが嫌
サイコンだと心拍を取るのにあの鬱陶しい心拍ベルトが必要になるため、それを嫌ってスマートウォッチを併用する人もいるかもしれません。心拍だけはスマートウォッチを見ればいいわけですし、Garminウォッチならサイコン側にワイヤレスで心拍を飛ばす機能があるので、実質心拍センサーと同じように使えます。これは結構大きいと思いますね。
ログのバックアップ
サイコンは長時間使ってるとフリーズしてしまうことがたまにあるので、そうなるとログが取り出せなくなります。もしブルベなどで数百キロ走った後にそうなればかなりの痛手でしょう。そこで保険としてスマートウォッチで並行してログを取っておくという使い方は考えられます。
最後はコスパと価値観の問題
最近のスマートウォッチは劇的に進化しているので、サイコンでできることのほとんどはスマートウォッチでもできてしまいます。確かにパワーメーターまで駆使して真剣にトレーニングしている人ならサイコン以外の選択はあり得ないでしょうけど、そうではない普通の人にとっては必ずしもサイコンにこだわらず、スマートウォッチで事足りる場面も多いんじゃないかと思います。もちろん画面の大きさなどから来る不自由さもありますが、それを補って余りあるメリットもあります。上で比較したようにそれぞれに得手不得手があるということです。
最終的にはコスパと価値観の問題だと思いますよ。サイコンって自転車に乗っている時しか使えないのに数万円~十万円くらいしますよね。もちろん自転車に相当入れ込んでいてそれだけの価値があると思えば高くはないわけですが、一般的な感覚からすればかなり高価な品物ですね。だってクロスバイクの一台くらい軽く買えるんですから(笑)。
それに対してスマートウォッチは文字通り時計として日常生活で使えますし、ランニング、ウォーキング、登山などあらゆるスポーツにも応用可能です。サイコンに比べて守備範囲は非常に広いといえます。価格はピンからキリまでありますが、安いものでは1万円前後から高いものでは10万円以上もあります。しかし平均的に言えば2~3万円クラスが主流になるでしょう。Garminウォッチは高価ですが、必ずしもGarminでなくてもできることはさほど変わりません。最低限、心拍と移動ログが取れてstravaにアップロードできればそのくらいのクラスで十分です。サイコンに比べれば機能の割にずいぶん割安に思えます。
自分のようにeTrexで足りない部分を補完するという意味では、やっぱりサイコンよりスマートウォッチだと思うのです。サイコンはどうしてもeTrexと共存させることが困難だからです。今使ってるスマートウォッチも概ね満足していますが、いずれバッテリーがへたってダメになってくると思いますので、その時はまた新しいスマートウォッチを買うだろうと思います。
コメント
今年になって発売されたGARMIN のスマートウォッチは相当改善されているようですが、手首に着けるスマートウォッチの心拍計の精度はとてもトレーニングに使える物じゃ無いです。上腕に着ける光学式は結構いいようですが。
普段はそれらしい数値を記録しときながら、ここぞって時にごみデータを記録してくださいます。
きっちりトレーニングしたいなら胸のベルト位気にならないですし(それを言い訳にする人はそもそもデータを取りたくないのでは)、どうしても嫌なら、上腕式にすればすむ話。
両方で記録して確認してますが、ほとんどの場合は一致します。なぜか休憩して心拍が落ちた後に再スタートすると追い付いてこれないことがたまにあります。それも時間が経つと追従するようになるので特に問題は感じていません。
上腕式は長袖インナーを着ていると使えないので夏専用です。