実走日:2003年11月18日(火)
コース:波瀬~栃谷~加杖坂峠~青田~蓮~蓮ダム~森~乙栗子~波瀬
奥香肌峡は1994年に訪れているが、自転車ではそれ以来の再訪である。この日、桜井在住のcancanさんが高見トンネルを越えて大台町まで走るということなので、それに一部ご一緒させていただくことになった。絶好の好天で暖かく、ひょっとしたら今年最後のチャンスになるかもしれないという思いもあった。午前8時半に掲示板を見ると、現在菟田野町役場前にいるという書き込みがあった。菟田野町までは車でも1時間はかかる。果たして1時間の差を詰めることはできるだろうか。いくら車とはいえ、高見トンネルを越えてしまったらもう追いつくことはできない。あわてて家を出発する。
約1時間で菟田野町に到着し、cancanさんの携帯に電話を入れてみると、現在東吉野の温泉前にいるとのこと。これは何とか追いつけそうな感じである。高見トンネルへの上りを少し急いで走っていくと10時頃、杉谷トンネルの少し手前でcancanさんを発見、無事追いつくことができた。自分は波瀬に車をデポして行くことになるので、次どこで合流するかを相談。時間的にはだいたい同じくらいになるだろうという予想のもと、最終的には加杖坂トンネル手前で合流するという打ち合わせで一旦別れる。高見トンネルを越えて三重県に入り、10時15分頃波瀬の「グリーンライフ山林舎」前に到着。ここの駐車場に車をデポして10時25分頃走り始める。
国道166号を奈良方面へ少し走り、落方トンネル手前に左へ入る旧道がある。「近畿のみち」の道標が立っているところがそれである。栃谷へは川沿いのこの道を経由した方が少し楽になる。一旦国道の下をくぐり、ぐるっと回ってもう一度くぐり返す。そこからもう少し行くと橋のところで高見峠から来る道と合流する。周りを見回してみたがcancanさんの姿はない。おそらく少しだけ先に行っていると思われるのでそのまま栃谷へ上り始める。栃谷の集落に入るときれいな紅葉に目を奪われる。そこで写真を撮っていると前方にカメラを構えるcancanさんを発見。無事合流することができた。
栃谷では「山里の駅」なる施設ができていた。集落を抜けると峠へ向かってきつい上りが始まる。cancanさんのスーパーワイドレシオとは違ってロードは一漕ぎでずいぶん上ってしまうのでだんだん間が開いていく。それで自分が先に行って上ってくるところを待ち構えて写真を撮る。ヘアピンを数回繰り返して高度を上げていく。2~3回休憩したが、15分ほどで加杖坂トンネルに到着。前来たときはもっときつかったように思ったが、大したことはない上りであった。トンネル前で休憩しながらしばし談笑する。
cancanさんはトンネルよりさらに上の旧峠を目指すとのこと。トンネルが目の前にあるのに自分としては考えられない行為である。ダートもあるのでどうしようか迷ったが、せっかくなのでご一緒させていただくことにする。トンネルの右手から旧道へ入っていく。コンクリート舗装されているが、さほどきつくはない上りが続く。しばらく行くとコンクリート舗装は終わり、ダートとなる。轍が溝状に深くえぐれており、怖いので降りて歩く。そうこうしているうちに上りが終わり、いつの間にか旧峠に着いてしまった。トンネルからわずか10分、あっけないほど短い上りであった。cancanさんは標高差120mと言っていたが、後で地図を見ると60mしかなかった。どうりで短いわけだ。旧峠にはお地蔵様があり、歴史を感じさせる。トンネルができた今は誰も通る者などない、実に静かな峠である。
峠は薄暗くて寒いので早々に下り始める。すぐにぬかるみにタイヤをとられて怖い。cancanさんは構わずどんどん下っていく。途中ヘアピンカーブのところから山並みの展望が素晴らしかったが、金網が邪魔して写真を撮れなかった。そこから間もなくトンネル東口に出る。結局、峠のこちら側はずっとダートだった。トンネル東口から再び県道を豪快に下っていく。しかし日当たりは良いが結構寒い。ウィンドブレーカーを着るのを忘れてしまった。途中で止まるのも面倒なのでそのまま下り続ける。青田集落の少し手前で道路右側に大きなカエデの木を発見。ここはなかなかきれいに紅葉している。
ここでしばらく写真を撮って、さらに下ると間もなく青田の集落に出る。といっても民家がほんの数軒あるだけの寂しいところである。青田川沿いにはキャンプ場などの施設が最近できており、別荘風の建物も見受けられる。中間橋と呼ばれる茶色のアーチ峡を過ぎると間もなく赤い辻堂橋が見えてくる。湖面に太陽がキラキラと反射して美しい。cancanさんがここで止まっていたので自分も写真を撮る。
辻堂橋のところで蓮集落までピストンするかどうかしばし相談するが、時間は十分あるということなので蓮まで行くことにする。辻堂橋を渡り、すぐ辻堂トンネルを抜ける。県道蓮峡線はややアップダウンがあるが、概ね平坦で結構スピードが乗る。cancanさんも快調に飛ばしているようだ。しばらく行くと蓮中間橋と呼ばれる茶色のアーチ橋があり、そこを過ぎると次第に川幅が狭まってくる。道の右側には「清瀬の滝」、「蓮の滝」などと名付けられた「蓮八滝」が現れる。滝とは言ってもスケールはごく小さい。やがて蓮末端橋と呼ばれる橋に到着し、これより先は一本道となる。蓮川は次第に露岩が多くなり、渓流の様相を呈し始める。川の対岸にあって少し遠いが、一本だけきれいな紅葉を見つけたので木の隙間から写真を撮った。
植林の中をゆるやかに上っていくと林道宮の谷線との分岐に着く。ここを左に折れれば池小屋山登山口である。
ここまで来れば間もなく終点の蓮(はちす)である。しかし最後は結構な急坂だ。やがて蓮の地名を表す標識が現れ、一軒の民家がある。一応人は住んでいるようだ。コンクリート舗装の道と分岐するところでダートとなった。そのままダートを進んでいったが、確か前来たときはダートになる手前に蓮の廃校があったはずだ。おかしいと思って一度立ち止まる。後ろから来たcancanさんが地図を広げてさっきのコンクリート舗装の道では?と言う。どうもそのようなので引き返そうとしたらダンプが6台くらい続けてやって来た。狭い道なのでよける場所も少なく、道端にへばりついて何とかやり過ごす。そしておよそ道とは思えないコンクリート舗装の荒れた道を数十メートルも上るとそこには空き地があるだけで道は途切れていた。確かこの辺に廃校があったはずなのだが、それが見当たらない。しばらくその場に佇んでいるうちに、その広さから見てどうもこの空き地が廃校跡ではないかという考えに至った。そしてその痕跡を残すものとしてタイルをはめ込んだコンクリートのブロックと人の形をくり抜いたコンクリートの碑を発見した。それは草に埋もれるようにして時間とともに忘れ去られようとしていた。これは前来たときも確かにあった。当時はその横に僻地教育に情熱を注いだ一教師の功績を称える記念碑もあったのだが、それはなくなっていた。数年前に一度車で来たことがあるが、その時はまだ木造の校舎と運動場、鉄棒などが残っており、かつてここに人が住んでいたことを物語る唯一の痕跡であった。今は荒れた空き地が残るのみ。プレハブの事務所が建っているところを見ると最近取り壊されたものと思われる。残っているうちに写真を撮っておけば良かったと悔やまれる。失われゆくものへの郷愁がいっそう込み上げる。
蓮にて。かつてここに廃校があった・・・
あまりにも殺風景なところなので休憩もなくすぐ引き返す。帰りは蓮末端橋を渡って対岸の林道を走ることにする。ところが橋の入口に「全面通行止」の看板があり、ちょっと不安になる。まあ自転車で行けないことはないだろうということで強行突入。対岸の道は小刻みなアップダウンが多い。やがて道が崩れている箇所があったが、そこはちょっと降りて難なく通過。もちろん車では通れない。このあたり落石が多い。これで終わりかと思ったら、もう一ヶ所バリケードで封鎖されており、そこは自転車を持ち上げて向こうへ下ろして通過。そしてすぐ蓮中間橋に着く。ここでcancanさんに写真を撮ってもらった。ちょうどその辺にきれいに色付いたカエデの木があったので写真を撮っておく。
そこから湖畔を走っていくと道の右側に小さな滝が連続し、やがて津本公園と呼ばれる桜の広場がある。春に来たら良さそうなところだ。このあたりからダム湖を見るとススキの穂が太陽の光に照らされてきれいだった。
津本公園から湖畔をもう少し走ると布引谷橋を渡り、間もなくトンネルに入る。そしてトンネルを抜ければすぐ蓮ダムの堰堤に出る。堰堤を渡って県道沿いの休憩所に着いた。時間は午後1時を回っており、ここでちょっと遅い昼食をとる。その間になぜかマイクロバスで来た団体が展望台の方へ大勢上っていく。こんなところが観光地なのだろうか。cancanさんの携帯はこんなところでも通じるようで、掲示板に実況中継を書き込んでいた。
昼食後、急な坂を下って下宇藤木の集落に出る。川沿いを走って家野で旧道に入り、小さい方の橋で櫛田川を渡って国道166号に出る。ここでcancanさんとはお別れ。これから湯谷峠へ向かうcancanさんを見送って、国道166号を奈良方面へ向かう。このあたり歩道の設置工事が行われていて少々走りづらい。乙栗子あたりは道路が改良されており大変走りやすくなっている。最後は波瀬までゆるい上り坂約10kmをノンストップ30分で走った。山林舎に戻ったのはちょうど3時前。いつものように山林舎で風呂に入って帰った。
走行距離 | 走行時間 | 平均速度 | 最高速度 | 最高地点 | 最大標高差 |
42.69km | 2:37:10 | 16.2km/h | 42.9km/h | 615m 加杖坂峠 |
385m |