■コースタイム
牛王田公園=0:20=登山口=0:25=林道終点=0:30=稜線取付=0:30=学能堂山=0:20=稜線取付=0:25=林道終点=0:20=登山口=0:20=牛王田公園【total 3:10】
学能堂山は室生をはじめ、まわりのほとんどの山からよく見ることができるので、一度登りたいと思っていた。今日は遅くから下り坂という予報だが、朝は快晴である。6時40分に出発して、美杉村の三多気の桜駐車場(牛王田公園)に8時15分頃到着。車は一台もいない。8時 30分に駐車場を出発し、国道368号線を少し戻る。杉平のバス停を過ぎ、すぐ伊勢本街道の標識を見て左折する。狭い坂道を登って栄昌寺の墓地の横を過ぎると未舗装の林道となる。林道は結構な勾配で登っていき、道が大きく右カーブする地点で左に山道があったのでそちらへ入る。標識はなかったが、赤いテープが巻かれているし、地形的にも谷筋なので間違いないと思った。しかし、ものの3分も行くと道が途切れて沢の中に入り込んでしまった。少し様子を見てみたが、どう見ても道ではないようなので、間違えたと思って引き返す。林道をほんの数10m登るとコンクリート舗装に変わり、すぐ左に分岐があった。そこにはちゃんと「学能堂山」と書かれていた。結局、早く曲がりすぎたのであった。これで10分のタイムロス。
山道に入るとさきほど歩いた道がすぐ下に見えていた。この道は結構しっかりした道である。やがて道は鬱蒼とした植林のなかに入っていき、展望も何もない淡々とした登りが続く。勾配はまださほどきつくない。登山口から25分ほどでいったん植林を抜け、林道終点に出る。ここへ出る手前はちょっと藪が深い。しかし林道終点といっても林道らしきものは何もない。ただ「学能堂山登山口」の標識があるだけだ。
そこからまた鬱蒼とした植林帯に入る。しかも今度は非常に暗い。こんな深い植林はいまだかつて見たことがない。空は晴れているのに木漏れ日さえ差し込まない暗さで薄気味悪く、重苦しい空気が漂う。もちろんこんなマイナーな山だから他の登山者もいない。ここを一人で登っていると心細くなってくる。5分くらい登るとにわかに明るくなったが、またすぐ暗くなる。しかもものすごい急勾配だ。このきつさは大洞山と同じである。あとはもう退屈極まりない植林の中の登りが延々と続く。道が多少不明瞭になる箇所もあるが、ずっと「大近山の会」のテープが張られているので迷うことはない。息もつかせぬ急登が続いた後、少し薄明るくなってくるとようやく稜線に出た。
稜線には標識があり、左に道をとる。右には行けないようにロープが張られている。稜線に出てもまだ植林が続いている。しかし登りはずいぶん緩やかになり、杉のトンネルのような幅の広い道を淡々と登る。やがて道は平坦となり、非常に快適に歩ける。そして両脇に笹が現れるようになるとようやく植林帯が切れて自然林となる。雰囲気も明るくなり、木の間越しにちらちらと展望が望めるようになる。これで山頂まで楽勝かと思われたのだが、間もなく深い藪に行く手を阻まれた。笹だけでなく、イバラや背丈を超えるススキもあり、非常にうっとうしい。道が全くわからないほど完全に覆われている。そこが道であることをわからせるのは緑色の鹿よけネットだけである。やはりあまり人の登らない山というのはこんなものなのだろうか。藪がせいぜい数 10mくらいならよいのだが、行けども行けども終わりそうにない雰囲気である。このまま山頂まで続くのかと思われたので、無念の撤退を決意する。行きはともかく、帰りもまた通らなければならないと思うと非常に憂鬱だったからである。そして藪の手前まで引き返した。地図を見ると頂上まであとわずかの距離のようなので非常に名残惜しい。今撤退するともう二度とあの急坂を登る気にはならないであろう。その場にしばらくへたり込んでいると後ろから声がして、年輩の夫婦が登ってきた。今日初めて人に会ったので何か地獄で仏に出会ったような気分だった。挨拶をして見送ると、その夫婦は果敢に藪の中に突っ込んでいったのであった。それを見てやはりここで引き返すわけにはいかないと思い、再び藪の中に突入する。もう夫婦の姿は見えないが、先に通ってくれたおかげでうっとうしい蜘蛛の巣が取り払われて幾分歩きやすくなっている。結局、藪漕ぎが続いたのは100mくらいだっただろうか。その後は普通の歩きやすい道となったのである。そして山頂までの最後の登りとなり、再びさっきの夫婦を追い抜いた。山頂の直前はまた笹やススキの藪となって歩きにくかったが、もう勢いで突っ切ってしまった。そして11時10分頃、展望の広がる山頂に飛び出した。
学能堂山山頂
天を突く高見山
山頂は背丈を超えるようなススキで埋まっているが、うわさに聞く素晴らしい展望だ。特に高見山と局ヶ岳がそれぞれ最も美しい山容を見せている。大洞山もここから見るのが最も美しいであろう。とにかくどこからもよく見える山なので、登ったことのある山々がほとんど見える。ああ、引き返さなくてよかった。意外なことに名張の市街もくっきりと見え、さらに青山高原から鈴鹿までが一望のもとだ。東にはよく名前を知らない伊勢の山々が幾重にも重なり、登高意欲をそそられる。「学能堂山」、「岳の洞」と書かれた二つの山名板があるが、どちらも「ガクノドウ」と読む。ススキはまだ穂が開いていないが、10月になると大変美しいであろう。しばらくすると単独の男性が登ってきて、こんな山にも結構登ってくる物好きがいるものだと思った。先ほどのご夫婦に写真を撮ってもらったり、梨をご馳走になったりしながら40分ほど滞在した。三重県の津から来られたとのことである。余談だが、持っているカメラが同じNewFM2なのだった。それに同じ場所に車を停めていたこともわかった。
局ヶ岳を望む
大洞山(左)と尼ヶ岳(右)
正午前に下山を始め、先ほどの夫婦がサルナシを集めていくというので一緒に教えてもらった。頂上のすぐ下にサルナシの木があり、実がいっぱいなっていた。キウイと同じ仲間ということで、確かにキウイに似た味がする。果実酒にするとおいしいということで、ご夫婦は袋にいっぱい集めていた。そして一応ここでお別れして下り始めるが、実際はまた抜きつ抜かれつになるのであった。再び藪を突破して植林帯に入ると、もう一組の夫婦が休憩していた。結構登る人がいるものだ。稜線を離れるとまた鬱蒼とした植林の中、しかも膝に来る急勾配で疲れる。何とか林道まで下り、あとはぶらぶら歩いて13時35分に駐車場に到着。5分ほど遅れて頂上で会ったご夫婦が帰ってきて、お礼を言ってお別れしたのであった。