実走日:2004年9月4日(土)
コース:曽々木~大谷町~木ノ浦~禄剛崎~三崎町~蛸島町~珠洲駅
昨晩の天気予報では「曇り時々晴れ」とまずまずの予報だったのに、今朝になってみると「曇りのち雨」に変わっているではないか。どんどん悪い方向へずれる天気予報、後から修正するなら誰でもできる、ええ加減にせい! 朝からボリュームたっぷりの食事で腹ごしらえをしたあと、8時過ぎに「横岩屋」をそそくさと出発する。今のところまだ薄日が射しているが、雨が降り出さないうちに先を急がなければならない。昨日は逆光で撮れなかった窓岩を撮影し、「曽々木の名水」でボトルの水を補給して曽々木の町に別れを告げる。
曽々木トンネルを抜けると間もなく真浦、大きなホテルも建ち並ぶ観光地である。集落を抜けてすぐの逢坂トンネルは旧道で迂回しようと思っていたが、落石で通行止めになっていたのでトンネルを通る。トンネルを抜けると風光明媚な海岸風景が続く。このあたり昔来たことがあるはずなのだが、ほとんど記憶にない。通過するだけの車の旅ではそれも仕方ないのだろう。それにしてもこれまで味方に付けていた風が今日ばかりはずっと向かい風なのだ。急いでいるときに限って風に苦しめられる。吹きっさらしの海岸線では風を避けることもできず、18km/hくらいでしか巡航できない。しかも向かい風はますます強くなっており、この分だと禄剛崎到着がかなり遅れることが予想される。だんだん雲が厚くなってきて日差しがなくなり、気は焦る一方だ。
大谷で国道249号と別れ、県道大谷狼煙飯田線に入る。ここからはアップダウンが多くなり、小さな岬を越えるたびに上らされる。このあたりまで来るとうら寂れた漁村の雰囲気が旅情をそそり、景色は大変美しいが、気が焦っているのでゆっくりしているわけにもいかない。高屋町を過ぎて堂ヶ崎を回り込むと本日最大の難所にさしかかる。木ノ浦まで標高差110mを上る結構きつい上り。ガードレールがずいぶん上に見え、あそこまで上るのかとゲンナリさせられる。昨日の中屋トンネルよりもこちらの方がきつかったように思う。
二度のヘアピンを回ってさらに直線状に上らされ、やっと木ノ浦の展望台に着く。
ここからは上ってきた道が一望の下に見渡せ、苦労が報われる。展望案内図によると真浦のあたりまで見えているようだ。ここへ来てちょっと日差しが戻ってきた。少し安心して10分ほど休憩する。
木ノ浦を越えると折戸まで快適な下りが続くが、それも束の間、川浦から狼煙へ向けてまた40mほどの上りとなる。そこを越えると平坦な水田地帯が広がって海岸に突き当たったところが狼煙の集落となる。ここには観光バスも入る駐車場や土産物店などがあって、ちょっとだけ観光地の雰囲気。しかし観光客の姿はほとんどなく閑散としている。灯台入口と書いてあるところに自転車を置いて、急な坂道を歩いて上っていく。5分ほど上ると休憩所があって、間もなく禄剛崎の灯台が見えた。ここはまだ一度も来ていないのだろうか、全く記憶がない。写真が残っていないところを見るとたぶん来ていないのだろう。あやふやなものだ。灯台自体はずんぐりとして背が低く、あまり見栄えはしない。すでに高台にあるのでそんなに高くする必要もないのだろう。しかし断崖のすぐ下の海は大変透明度が高く美しい。観光案内によると能登半島最北端という触れ込みだが、正確に言うと少し西にあるシャク崎の方が本当の最北端だ。まぁそんなことはどうでもいいか。ここへ来て何と青空が広がってきた。もう雨の心配はないだろう。とことん外れる天気予報を笑うしかない。
自販機で飲み物を調達した後、狼煙の町を後にする。ここから珠洲岬を越える最後の上りにさしかかる。標高差にして約70m、これを過ぎればもう上りはない。天気も良くなってきたので気分よく上り、一気に下って三崎町に到着。ここから能登の内浦に入るわけだ。明日は祭なのだろうか、あちこちで山車の準備をしているのを見かける。禄剛崎まで付きまとわれた向かい風からやっと解放されて海岸線を快調に走り、森腰から松林の中の広い2車線道を走る。
小泊では新道を避け、海側の旧道に入る。このあたりが能登半島の最東端となる長手崎である。いかにも漁師の家といった雰囲気の簡易郵便局の裏手に申し訳程度の小さな灯台が立っている。もちろん観光地でも何でもなく、誰も気付かないようなところ。自転車でなければ通り過ぎてしまうだろう。
ここから進行方向が西向きに変わり、いよいよ珠洲の市街に入ってきた。鉢ヶ崎海水浴場の駐車場で少し休憩した後、来年3月いっぱいで廃止される「のと鉄道」を撮ろうと蛸島駅へ向かう。しかしいっこうに駅が見つからないと思ったら、いつの間にか行き過ぎてしまっていた。数百メートル引き返して民宿の前に蛸島駅はあった。あまりにも小さすぎて見落としてしまったのだ。
蛸島駅はのと鉄道の終着駅だが、ほとんどの列車は珠洲発着となっているため、ここから出る列車は非常に少ない。幸運にも12:21発の穴水行きに間に合った。自分はまだ乗る予定ではないので、発車時間までゆっくりと写真を撮っておく。消えゆくものを残すことこそ写真の使命だ。今度来るときにはもう見られないだろう。名残を惜しむ鉄道ファンの姿も数人見られた。駅は無人となっているが、中には店があってなぜか「たこ焼き」を売っているのが笑える。列車を見送って最終目的地の珠洲駅へ向かう。
蛸島から珠洲まではわずか2駅だけ。自転車でも15分ほどで着く。しかし駅を示す道標などが全くなく、なかなかわかりにくかった。駅前はだだっ広く閑散として、駅前という雰囲気が全くしないのだ。付近で昼食をとろうと思っていたのに店などは全くない。完全に寂れきっている。間もなく廃止されるのだから今さら再開発する気もないのだろう。まだ発車まで時間があるので飯田の国道沿いの「8番ラーメン」まで行って少し遅い昼食をとる。それからスーパーで車中の食料を買い込んで珠洲駅へと戻る。
珠洲14:29発の穴水行きに乗り込む。車内は結構込み合っていて廃止が嘘のような盛況である。のと鉄道は未だに手荷物料金が必要なので、輪行袋を見て駅員に買うように言われた。270円なり。降りるときにもしっかり切符は回収された。これも赤字地方鉄道の悲しさだろうか、とりあえず少しだけ収益に貢献しておいた。穴水で七尾行きに乗り換え、和倉温泉で降りて16:53発「サンダーバード44号」大阪行きに乗り換える。あとは京都まで乗り換えなし、楽なものだ。京都には20:06到着、近鉄に乗り換えて21時半頃帰宅した。天気予報に翻弄された3日間だったが、結果的に雨は降らずまずまずのコンディションだった。この後ずっと不安定な天候が続き、もしこのとき行っていなかったらツーリングは実現しなかっただろう。
走行距離 | 走行時間 | 平均速度 | 最高速度 | 最高地点 | 最大標高差 |
48.10km | 2.37.14 | 18.3km/h | 49.5km/h | 110m 木ノ浦付近 |
110m |
■ノート
のと鉄道穴水~蛸島間(能登線)は2005年3月末日をもって廃止。
のと鉄道珠洲~和倉温泉間は運賃1,790円、手荷物料金270円、所要約2時間10分。
和倉温泉~京都間はJR運賃5,250円、自由席特急料金2,310円。