昨年あたりからでしょうか、日本でもグラベルロードというものが急速に注目されるようになりました。これはディスクブレーキの普及とも関連しているのですが、今年はどの自転車メーカーもグラベルロードの開発に力を入れているように思えます。ラインナップも非常に充実しており、通常のロードバイクと並ぶもう一つのカテゴリーとして確実に勢力を広げています。メーカーはもちろん、ショップやメディアも巻き込んでまさに業界をあげてグラベルロードを盛り上げようという気運が感じられます。
しかし、笛吹けど踊らずと言いますか、業界の思惑とは裏腹に日本ではグラベルロードは売れていないように思います。市場の反応は冷ややかです。ご存知のように日本におけるスポーツバイクのシェアはロードバイクに偏重しており、グラベルロードのシェアなんて1パーセントもないと思います。少なくとも僕は実際に走っているところを見たことがありません。そのくらいレアな車種です。
自分も一度はグラベルロードの購入を本気で考えましたが、結果的には見送りました。それは見送るだけの理由があったからです。おそらく他の人も考えることは同じだろうと思います。僕の予想では業界がいくら頑張っても日本ではグラベルロードは流行らないと思っています。これはかなり確信的です。それには日本固有の事情というものがあるからです。そこで自分なりに日本でグラベルロードが流行らない理由について考えてみたいと思います。
グラベルロードはアメリカ発祥
グラベルロードはアメリカ生まれのスポーツバイクです。したがってルーツはMTBと同じですね。ただ背景はMTBと少し違っており、MTBは山道を走るのがメインであるのに対し、グラベルロードは未舗装路を含むある程度の長距離を走るために生まれました。アメリカには未舗装路が何百キロも続くような荒野が至るところに広がっています。そういう場所を何日もかけてキャンプしながら旅する遊びが最近人気で、そのようなスタイルをアドベンチャーツーリングと呼んでいるそうです。そしてアドベンチャーツーリングに最も適した自転車としてグラベルロードが誕生したわけです。
グラベルロードの特徴はロードバイクと同じドロップハンドルを採用しながらも、より太いタイヤが履けるということです。太いタイヤを履くためにはキャリパーブレーキでは無理があり、必然的にディスクブレーキが標準装備となります。つまりディスクブレーキの普及と不可分であるわけです。また通常のロードバイクにはないダボ穴を豊富に用意しており、キャリアや泥除けを取り付けられるようになっています。これも荷物を満載してキャンプをすることが前提のツーリング車として欠かせない装備です。結果として、通常のロードバイクに比べて走る路面を選ばず、荷物もたくさん積めて、それでいてMTBほど重くないので長距離も快適に走れるという特徴を持っています。まさに荒野を何日も旅するのに最適な自転車になっているわけです。
グラベルロードとよく似たものにシクロクロスというものがありますが、こちらはもっと歴史が古くヨーロッパが発祥です。もともと自転車競技として始まったものですから純然たるレース機材であり、グラベルロードに比べるとタイヤは細身で軽量であることが特徴です。荷物を積むことも考慮されていません。レースを目的としないグラベルロードとは明確に区別しなければなりません。
自転車業界がグラベルロードに力を入れる理由
海外の話は別として、日本では最近ロードバイクが売れなくなっています。現在のロードバイクブームが始まったのは2010年頃、弱虫ペダルのヒットがきっかけであったことは間違いありません。その頃をピークとして爆発的に売れてましたが、今では弱虫ペダル人気も下火となり、ロードバイクの売れ行きは低迷期に入っています。一度買った人はそう簡単に買い換えませんから、ロードバイクの市場はもう飽和に達しているのです。今後下がることはあっても上がる見通しは全くありません。最近は廃業するショップも増えていると聞きます。
そこで業界が目を付けたのがグラベルロードです。ロードバイクが売れなくなっているので、今までと違うコンセプトの自転車を流行らせようと必死になっているわけです。スピードにこだわらないスローツーリズム、荷物が積めて通勤通学にも便利と盛んにアピールしながら、今までロードバイクに興味を示さなかった層にも訴えかけて新たな需要を掘り起こそうとしているわけですね。しかしそんなにうまく行くでしょうか?
アメリカと日本は違う!
もともと荒野を何百キロも走破することが目的で生まれたグラベルロードですが、日本にそんな場所がありますか? 絶対ないですね。日本の道路の舗装率は世界一と言われており、どんな田舎に行っても無意味に立派な舗装道路が張り巡らされています。未舗装路を探す方が難しいです。かつてはダートの宝庫だった林道も最近は舗装化がどんどん進み、ダートなんてあったとしてもせいぜい数キロで終わってしまいます。そもそも日本にはグラベルロードが活躍できるフィールド自体がほとんどないのです。
トレイルを走るならマウンテンバイクの方が適している
グラベルというのは日本語で言えば「砂利道」を意味します。イメージとしてはダート林道がそれに近いですね。それに対してもう一つの用語としてトレイルという言葉もあります。こちらは日本語で「小道」を意味します。概ね登山道のようなものをイメージしてもらえばいいでしょう。
上で述べたように日本ではグラベルに該当する道路はきわめて少ないですが、はるかに多いのはトレイルです。日本は国土の7割以上が森林という森の国ですから、トレイルというのは至るところに存在します。それならば走る場所に困るということもないでしょう。
しかしグラベルロードはグラベルは得意でもトレイルには向いていません。タイヤが太いと言っても最大で45Cくらいですから、トレイルをガンガン攻めるには役不足です。もちろんサスペンションも付いていませんし、操縦性で言えばドロップハンドルよりフラットハンドルの方がはるかに良好です。トレイルを走るならMTBが断然有利でしょう。もちろんMTBならグラベルも走れますし、どうせ短距離しか走らないのであればMTBを選んだ方が応用範囲は広いのです。グラベルよりトレイルの方がはるかに多いという日本の特殊事情を考えるとグラベルロードよりMTBの方が実用性があります。
車が必須
うちみたいな田舎だとダートなんてそこら中にありますが、東京や大阪のような大都会の真ん中に住んでるとダートといえば河川敷くらいしかないんじゃないでしょうか? 本格的なダート林道に行きたいと思えば自走はとても無理で車で自転車を運ぶ必要性が出てきます。つまり車を持ってないと楽しめないのです。輪行すれば良いじゃないかという話もありますが、ダート林道というのはものすごく山奥にしかないので鉄道でアクセスするのは困難です。やっぱり車を持ってないと厳しいです。
日本の人口の約3割が首都圏に集中していることから、その辺の人は車がなければダート林道に行くこともできないのですよ。それに対してロードバイクというのは都市型のスポーツです。玄関を出たらそこがすぐフィールドですからね、圧倒的な人口を抱える大都市圏で流行る理由がよくわかります。そうでなければここまでロードバイクが普及しなかったでしょう。
田舎では車がなければ生活できませんが、都会では車を持つことがハードルになっています。今の若者はお金を持ってませんから、車を買うのも困難です。買えたとしても月数万円の駐車場代、車検、保険、税金、ガソリン代などものすごくお金がかかります。実質賃金が下がり、日本人がますます貧しくなっていく中で都会で車を持つことは容易なことではありません。これはMTBが廃れた最大の原因であると思っています。もちろんグラベルロードも例外ではありません。
日本人は忙しい
グラベルロードはもともと長期間かけてキャンプしながら荒野を走破するために生まれた自転車です。でも日本人にそんな休みがありますか? ここで言う休みとは1ヶ月以上の長期休暇のことですよ。はい、そんなもの日本には絶対ありませんね。長くてもせいぜい1週間、それどころか有給を1日取るだけでも大変なご時世です。世界一長い労働時間を誇る日本では、学生でもない限り、のんびりキャンプツーリングなんかできるわけがないでしょう?
日本人は群れるのが好き
日本人の最も悪い習性として、「他人に合わせようとする」「長いものに巻かれろ」的な性格があります。つまり依存的で同調圧力に弱いのです。そして一人でいることが嫌いで群れたがる性質があります。これは自転車の世界でも同じでして、一人で走るのは嫌で必ず誰かと一緒じゃないと走れない人も多いですよね。ロードバイクって集団で走ってる人が多いでしょう? 日本人は意味もなく群れることを心の拠り所にします。
ここでもし初心者がグラベルロードを買ってロードバイクの集団の中に入ったらどうなるか? 重たくてタイヤの太いグラベルロードは普通のロードバイクより圧倒的に走りません。すると当然みんなについて行けないわけです。日本で圧倒的なシェアを占めているのはロードバイクです。ほぼそれしかないと言っても過言ではありません。だからみんながロードバイク乗ってるから私もロードバイクにしよう!ってなりますよね。
もちろん既にロードバイクを持っていて2台目としてグラベルロードを買うのは構いませんよ。でも最初に買う1台としてグラベルロードを選ぶのはとても勇気が要るのです。初心者がロードバイクを買っても3年以内に7割がやめると言われてますからね、2台目を買ってくれる確率は非常に低いです。つまり、ある程度自転車にはまって「自転車がわかってる」人にしか売れないわけで、市場規模としてはきわめて小さいのですね。
そもそもロード乗りは興味を示さない
日本ではオンロード系とオフロード系がはっきり分かれていて、互いに交流が少ない特徴があります。最初にロードから入った人はずっとオンロードにしか興味がなく、MTBから入った人はオフロードにしか興味がないって感じです。両方に興味を示す人はかなり少数派です。これは一種の派閥であって、ロードとMTBでは文化が違うのです。それどころか互いに貶し合う場面すらしばしば見られます。つまりお互いの文化を理解し得ないのです。まだまだ日本には自転車文化が根付いていない証拠ですね。
ですからグラベルロードに興味を示す層は大方がMTB乗りと決まっています。ロード乗りは速く走ることと長距離を走ることしか興味がないですから、スピードが出なくて距離も稼げないグラベルなんて初めから興味すら示しません。ただMTBというのは30年近く前に大流行しましたが、今ではすっかり廃れて少数派になっています。売れたとしても少数派を相手にしなければならないわけで、圧倒的多数を占めるロード派を取り込むことは困難です。
通勤通学に使うならクロスバイクで十分
ロードバイクの細いタイヤで市街地を走ると歩道の段差などに悩まされて走りづらいです。そこでグラベルロードの宣伝文句として、タイヤが太いので段差も安心、キャリアや泥除けが付けられるから通勤通学にも便利とアピールしています。しかしそれだけが目的なら初めからクロスバイクで十分じゃないですか?
クロスバイクというのは日本の道路事情に特化されて独自に進化したガラパゴス車種なんですよ(笑)。28Cくらいのタイヤは舗装路も軽快に走れて街乗りにはまさに最適。もともと通勤通学に使うことを想定してますからキャリアも付けられますよね。ぜんぜん十分じゃないですか?
グラベルロードにもいろいろありますが、舗装路しか走らないのであれば40Cくらいの太いタイヤは重いだけですよ。昔MTBで通勤したことがある人はわかると思いますが、太いタイヤって舗装路では路面に吸い付いて全然走らないんですよ。だからみんなロードバイクに行っちゃうんですよね。
唯一のターゲット層はサイクル野郎!
舗装路しか走らないのであればロードバイクが最高なんです。あらゆる自転車の中で最も速くて長距離も走れますから、まさにロングツーリングには最適。でも一つだけ弱点があるんです。それは荷物の積載です。もともとロードバイクはレース機材ですから荷物を積むことは初めから想定されていません。最近はバイクパッキングである程度荷物を積んで小旅行もできるようになってますが、それでも細いタイヤは重量に耐えられませんので積める荷物には限界があります。日本一周ツーリストのような大荷物を積むのはとても無理でしょう。
そこで僕がグラベルロードのメインターゲットになる層と考えているのは、昔ながらのいわゆる「サイクル野郎」系です。今から50年くらい昔はランドナーに4サイドバッグを付けて長距離のキャンプツーリングを楽しむサイクルツーリズムが流行ってました。まさに今のアメリカと同じじゃないですか? それを題材にした「サイクル野郎」という漫画もありましたね(笑)。
ランドナーという車種は今ではほぼ絶滅していますが、長らく日本では長期ツーリングに適した車種というものがありませんでした。大学生のサイクリング部などでは仕方なくクロスバイクやMTBに工夫して荷物を積んでいたと思います。そこへ登場したのがグラベルロードです。初めからキャリアの取り付けを前提としているのですから、これほど便利なものはないでしょう。MTBほどタイヤが太くないので舗装路しか走らないとしてもそんなに苦にはなりません。ドロップハンドルだから長時間乗っても疲れません。サイクル野郎がこれに飛びつかない理由はないと思いますね。まさに現代版ランドナーの再来じゃないですか?
ただ問題は、日本人は忙しいですから長期ツーリングができる人口は限られているということです。今やサイクル野郎というのは絶滅危惧種になりつつあります。せいぜい学生か世捨て人(笑)くらいですね。働き盛りの世代は休みがないので長期ツーリングには興味を示しません。今の日本で一番流行らないのが長期ツーリングという分野です。今でも日本一周をする若者は時々見かけますが、本当に細々と生き延びているだけです。とても業界が思うような市場拡大が狙えるはずがありません。
そしてサイクル野郎というのも世代が大きく二つに分かれると思うんですよ。一つは学生です。若者は新しいものにこだわりがないですから、学生のサイクリングクラブなどは文句なしにグラベルロードに飛びつくでしょう。もう一つはかつてのサイクルツーリズムを青春時代に体験したホンモノのサイクル野郎です。概ね60代以上の世代がそれに該当するでしょう。この世代は得てして保守的ですから新しいものに否定的です。今でもランドナー以外は認めない人がいます。ディスクブレーキなんてもってのほかですね(笑)。こういう層はグラベルロードに興味を示しつつも変なこだわりが邪魔して購入には至らないのではないかと思います。結局、売れるのは学生だけということになりそうですが、学生はお金を持ってませんから売れても安いのばかりになりそうですね。業界の思惑通りには全く行きません。
グラベルロードは意外と健闘している?
ここからは2021年現在の追記になります。僕は日本ではグラベルロードは絶対売れないと予想していましたが、意外や意外、ここ1~2年ほどで確実にシェアを伸ばしています。たとえばTwitterなどではグラベルロードを購入して楽しんでいる人を少なからず見かけるようになりました。
ただそういう人もほとんどがロードバイクを既に持っていてセカンドバイクとしての購入なんですよね。最初の1台がグラベルロードという人はほぼ見かけません。つまり、ある程度自転車にはまっていて、さらに新しい楽しみ方を求めてグラベルロードに手を伸ばすという感じなのでしょう。ではそういう人達はどういう楽しみ方をしているのでしょうか?
グラベルロードはもともと長期ツーリングのために生まれた車種ですが、何度も言いましたように日本ではそのような遊びは学生でもない限りほぼ不可能です。しかし既にグラベルロードに乗っている人達は日本という劣悪な労働環境の中でもそれなりに工夫して特性を生かした遊びをしているように思えます。そこで僕が提唱するグラベルロードの楽しみ方についていくつか挙げてみます。
速く走ることに価値を求めない
日本ではとかく速く走ることだけに価値を求める人が大多数です。別にレースに出るわけじゃなくても、stravaとかを使って1秒でもタイムを縮めることに躍起になってる人は多いですよね? それは結局、数字として目標がわかりやすいからなんですね。それに対してツーリングなんてこれと言った目標がないでしょ? だからわかりにくい。日本でツーリングが流行らない理由はこれですね。
それがさらに過熱すると、東京=大阪のような超長距離を24時間以内で走るキャノンボールや獲得標高8848mを24時間以内で登るエベレスティングといった超人的な挑戦をする人まで出てきます。もちろんそれはそれで大変価値のあることですが、そういう人にとっては1秒でも速く走ることが善であって、初めからグラベルロードなどという選択肢はありません。速さを考えればロードバイク以外にはあり得ないのです。
ただ長くロードバイクをやってますと、いずれ壁に突き当たるというか、速く走ることに疲れてしまう時がやってきます。そして「何も速く走らなくてもいいじゃないか」と気付くのです。今までサイコンの画面ばかり眺めながら景色には目もくれずに走ってませんでしたか? たまには自転車を止めてきれいな景色に感動して写真を撮ってみたりしたいと思いませんか?
そうやってのんびり気ままに走ることに気付いた人達が選ぶのがグラベルロードなのです。ロードバイクに乗るとどうしても速く走らなければいけないような気分になりますが、グラベルロードならそんな気持ちにはなりません。もともとスピードが出ない自転車ですから、まあゆっくり行こうや!でいいのです。個人的にはそういう目的にはミニベロの方が向いてるんじゃないかと思いますけどね(笑)。
日帰りツーリングにこそ便利!
日本の労働環境では長期ツーリングなんて無理ですが、実はそんなにスケールの大きい旅でなくても、日帰りショートツーリングでもグラベルロードの特性は十分に活かせます。
確かに日本の道路はほとんど舗装されていて、未舗装路を探す方が難しいですが、舗装路であっても荒れた道って結構多いんですよね。僕がよく行く酷道クラスになると、ひび割れや落石、木っ端なんてしょっちゅうあります。そういう道をロードバイクで走るのは相当神経を使いますが、グラベルロードならもっとラフに走ってもいいわけです。
また別に未舗装路を走りたいわけじゃありませんが、どうしても走らざるを得ないケースってたまにあります。そんなに長い距離ではないけれども、そこを通ると大幅に近道になるとか、交通量の多い国道を避けられるようなケースですね。ロードバイクなら進入することを躊躇するような未舗装路であってもグラベルロードなら臆することなく入っていけます。つまり基本は舗装路だけれども、たまに出くわすかもしれない未舗装路にも対応できるという懐の深さがグラベルロードの魅力なのです。これがMTBだと舗装路が苦手ですからダメなのです。
デイキャンプ的な遊びに最適
ツーリングといっても別に遠くまで行かなくていいんですよ。たとえば隣町にあるお気に入りの公園とか、河原でもいいんです。そういうとこへ行って、コーヒーでも沸かしたり、読書したりして数時間を過ごすといったささやかな楽しみがあります。別に泊まるわけじゃないですが、それも自転車を使ったデイキャンプの一種と言えます。
ただそういう楽しみ方をするにはどうしても荷物を積む必要があるのですね。リュックを背負ってロードバイクで行くのはあまりスマートじゃない。やっぱり自転車に荷物を満載して行く方が「旅してる感」が出るじゃないですか? だからグラベルロードが最適なんです。速く走ることにこだわらない人には、最近こういう遊び方を楽しむ人が増えてきたように思いますね。
結論:グラベルロードは自転車がわかってる人向け
グラベルロードってオールロードという別名もあって、文字通りどんな道でも走れるという意味です。1台で舗装路も未舗装路も走れるんなら万能じゃないか、最初にこれを買っておけば何も要らないと素人は考えるでしょう。でもそんな良いことばかりじゃないんですよ。グラベルロードが万能ならロードバイクやMTBが存在する理由がないですよね?
僕に言わせればグラベルロードは「帯に短し襷に長し」、つまり中途半端なんです。舗装路しか走らないのであればロードバイクの方が速いに決まってるし、トレイルを攻めるならMTBの方が向いています。グラベルロードはどちらもそこそこ走れるというのが売りであって、裏を返せばどちらも中途半端ということになりますね。自転車に限らず、中間的な性格の製品って今まで出ては消えていった気がします。それはやっぱり専用のものには敵わないことが明らかだからです。
ですから初心者が最初の1台としてグラベルロードを選ぶのはおすすめしません。これといった目的がなく、とりあえずグラベルロードを選んでおけばどんな道でも走れるから安心という考え方では必ず失敗します。これからどんな使い方をするかなんて、初心者にはわからないですよね?
初心者がはっきりした目的もなく最初にグラベルロードを選んでしまった場合、必ず「もっと速く走りたい」あるいは「仲間と一緒に走りたい」という欲望が出てくるはずです。そうなると結局ロードバイクを買い直す羽目になります。
ですからグラベルロードというのは既にロードバイクやMTBを持っている人がセカンドバイクとして買うべきものだと思うのです。そういう人であれば自転車の楽しみ方は既にわかっているはずですし、目的ははっきりしているはずですから、グラベルロードの中途半端さも受け入れられる余裕があるのです。