これからの自転車趣味のあり方を考える

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自転車自転車趣味

最近自転車を始めたばかりの人は新しいコースを開拓することに余念がなく、どんどん行動半径も広がってそりゃ楽しいでしょうね。自分にもそんな時代がありました。そういう人を見ていると何だか微笑ましくなってきます。

しかし自転車歴ウン十年の自分にとっては何もかもがマンネリで感動がなくなっていくんですよね。そりゃいつも同じところを走っていれば飽きもするものです。いずれ誰もが突き当たる問題でしょうけど。

マンネリを打破するための手っ取り早い方法としては、走る場所を変えるということです。つまり何らかの方法で普段の生活圏の外に自転車を持ち出し、知らない土地で走るのです。まあ平たく言えば「旅」ですね。

いつもと違う場所を走るのは新鮮でそれはそれで楽しいものです。自分もそうやって旅を繰り返してきましたが、最近になってこれも限界を感じてきました。そもそも旅というものは日常を飛び出して非日常を体験することに意義があるわけですが、非日常が日常になってしまうともはや感動がなくなるわけです。

旅に依存したサイクリングというのはもう限界に来ているのだなと痛感します。そこでこれからのサイクリングのあり方について方向性を考えていきたいと思います。

サイクリングは日帰りに限る

普通、旅といえば最低1泊はしてどこか遠方へ行くことを指します。もちろん日帰りでも旅であることには違いないですが、あえて「日帰り旅」という言い方をしたりしますね。そのくらい旅と宿泊は切っても切り離せない関係にあります。

しかし自転車の場合、この宿泊というのがいけません。なぜならたとえ1泊であろうと宿泊するだけで荷物が飛躍的に増えるからです。普段のライドで使う荷物に加え、宿泊先での着替え、ライド中の行動着、日用品などが加わります。さらに天候が怪しい時は雨具の用意も必要になります。これらは結構かさ張るものですから、自転車にバッグを付けて積むか、ザックに詰めて背負うことになります。その結果として重量が増え、遅くなります。自転車というものは人力で動かす以上、重くなればなるほどパフォーマンスが下がるのです。当然、一日で走れる距離や標高も制約が大きくなります。

一方、日帰りライドであれば荷物は非常に少なくなります。最低限の装備といえば、予備のチューブやパンク修理道具、ポンプ、携帯工具、鍵、行動食、あとは財布などの貴重品くらいのものです。これらはサドルバッグやツールボトルに常備している人も多いでしょう。日帰りである限り、ちゃんと調べて行けば雨に降られることもないですから、雨具の必要もありません。身に付けるものはジャージの背面ポケットに入るくらいしかありませんから、本当に身軽です。それでこそ最高のパフォーマンスが発揮できます。

日帰りライドの形態として、最も手軽なのは言うまでもなく自宅から走り出して自力で返ってくることです。誰もが最初はこの形からスタートするでしょう。脚力のある人はどこへ行くにも自走する人が多いですね。この形はとにかく手軽で思い立ったらすぐできるし、お金もほとんどかからないのが特徴です。

しかし毎回自走しているといつも同じ道を通ることになるのが退屈になってきて、もっと遠くへ行くには輪行あるいは車載で出発地点を移動させることを考えます。これなら途中の面白くない道をスルーして効率的に美味しいところだけを楽しめるわけです。これもその日のうちに帰って来る限りは日帰りライドの一形態です。

ここまではまあわかりますが、問題はその先です。いくら輪行や車載を使っても一日ではたどり着けない、あるいは走る時間がなくなってしまうというケースは往々にしてありますね。うちからだと南紀や近畿北部へ行くにはそんな感じになります。そういう場合、一日の走行距離は短くして途中で宿泊するというのが一般的なやり方ではないでしょうか? しかしこれをやると初めに書いたように荷物が飛躍的に増えてしまうのです。

そこで考えるのが「前泊」という方法です。1日目は移動だけにして出発地点の近くで泊まります。車中泊なら朝早く出発できるのでなお良いです。そして翌朝からライドに出発、一日かけて帰ってきて夕方頃から帰宅を始めます。まあ帰りは別に遅くなっても構わないわけです。自分も社畜時代は前日から乗鞍に入って、翌日レース出場してその日のうちに帰宅なんて普通にやってましたね。

まあ歳を取るとそういうことはさすがにしんどくなってきますので、「後泊」もした方が楽に帰れますね。ここでは2泊とも「自転車で」宿泊しないというところがポイントなのです。実質的には日帰りライドと同じなので、荷物が増えることはありません。つまり何泊しようが自転車で泊まらない限り、広い意味では日帰りライドと言えます。だから最低2泊すれば信州でも余裕を持って行くことができます。

ライドは1日だけにする

何泊しても自転車で泊まらなければ日帰りライドと同じ、確かにそうですが、これを連日やっちゃうと良くないのです。晴れが続くと毎日走りたくなりますが、翌日に脚を残さなければならないので1日のライドはどうしても抑え気味になってしまいます。自分の場合、1日50km以内に抑えないと次の日に疲労が残って走れなくなりますね。これが3日も続くともっと疲労は大きくなります。

高い交通費をかけて行ったんだから何日も走らなければ損だという考えが頭に浮かびますが、その貧乏根性が良くないのです。連日走るために体力をセーブした結果、思い切ったサイクリングができません。それよりは一番天気の良い日を狙って1日だけ全日ライドにあてることにより、体力全開でサイクリングを楽しめます。疲れ果てたらその日は温泉にでも浸かって翌日ゆっくり帰ればいいのです。

それに毎日走ろうと思っても、すぐ行くところがなくなりますよ。いつも最初の1日はコースを考えているのですが、2日目以降はノープランです。その場でコースをひねり出したりしてますが、やはり事前に下調べをしておかないと知らない土地ではとっさに思いつかないものです。その結果、あまり面白くないコースを走ったりして印象が薄れてしまうのです。それよりは1日に絞って、本当に走りたいコースだけを存分に走った方が満足感も高いというものです。

旅と自転車は完全分離する

これまで旅に自転車を持って行くべきか、さんざん悩んできましたが、この辺で結論を出しておこうと思います。旅に自転車を持って行ってはいけません。

旅と自転車を組み合わせるとお互いに潰し合ってどちらも楽しくなくなります。旅先で自転車も乗りたい、その貧乏根性が旅を台無しにするのです。旅は旅、自転車は自転車できっちり分けるべきです。二兎を追う者は一兎をも得ずです。自転車に乗りたいなら、それだけが目的で日帰りライドに限定しなければなりません。次にその理由を述べます。

まず第一に、物理的に自転車は邪魔です。旅の間中、自転車という大荷物を持っていなければなりません。走れば荷物にならないと言っても、乗らない間は邪魔な荷物であることに違いありません。一日だけならまだしも、それが何日も続くとなると邪魔で邪魔でしょうがありません。

第二に、自転車があると観光の足かせになります。駐輪場所の問題もそうですが、自転車乗りは歩くことを極度に嫌がるでしょう? ただでさえ疲れることをしているのに、歩いてさらに疲れたくないという心理ですね。しかもビンディングシューズを履いていますから、そもそも歩けません。だからちょっと歩く距離が長いと面倒になって素通りしてしまうのです。せっかく近くまで来ているのにもったいないことですね。

そして第三に、自転車があると移動効率が悪くなります。なぜかと言うと必ず戻ってこなければならないからです。たとえ50km程度でもそれだけで午後1時くらいまではかかってしまいます。そこから移動するとなるとわずかな距離しか進めなくなるわけです。自転車さえなければ効率良く広範囲を回れるのに、自転車があると行って戻っての繰り返しで狭い範囲からなかなか動けません。

したがって、旅行という観点からすれば自転車は物理的にも時間的にも行動を制約する邪魔以外の何物でもないのです。長期の旅行が目的であれば初めから自転車を持って行ってはいけません。逆に自転車が目的であればワンデイライドに徹して即帰ること。「旅のついでに自転車も」は厳禁です。欲を出して貧乏根性を発揮するとろくなことがありません。それが長年の経験から得た結論です。

結局、自走ライドが最高なんだよな

旅先でサイクリングすることを繰り返していると、「何のためにやってるんだろう?」とだんだん虚しくなってくることがあります。先にも書いたように、楽しいのは最初の1日だけなんですよ。あとはすぐ行くところがなくなって惰性で走っているみたいな感じになってきます。それはよく知らない土地ではどこを走っていいのか見当が付かないからです。そして早く帰って地元を走りたいってなるんですよね。これって自分だけ?

何だかんだ言っても地元を走るのが一番楽しいんですよね。最近悟りを開いたことに、自転車はわざわざ遠くへ行ってまで乗るもんじゃないんです。地元で乗っておけば良いんです。よく知らない土地を走るより、自走でどこまで行けるか挑戦する方がはるかに楽しいです。

過去の自分を超えることが目的である

地元で走っているといつも同じところばかりになります。新しい道を開拓すると言っても限界がありますから、それだけが目的だといずれ飽きが来ます。だから目的は他のところに置けばいいんです。

具体的には走行距離、平均速度、獲得標高、この3つの数値目標を達成することです。それは体力が向上したことの証になるからです。進歩がないと楽しくないのです。この中でもとりわけ平均速度が大事です。平均速度はパワーに直結する数値ですから、脚力のバロメーターになります。

旅系サイクリストの中には速く走ることに興味がない、あるいはサイコンの数字ばかり気にしている人を馬鹿にする傾向がありますが、それって偏った考え方だと思います。誤解を恐れずに言えば、自転車は速く走れてナンボです。速く走れたらそれだけ一日で走れる距離が伸びるわけですから、行動半径が広がります。速く走れて悪いことは何もないのです。

速く走るのは別に他人と競争するためではありません。他人と比較しても意味はないのです。目標はあくまでも過去の自分を超えること。ライバルは過去の自分自身なのです。

自転車はトレーニングの道具である

昔から自転車は旅なのかスポーツなのかという議論が絶えませんが、自転車を旅に結び付けるといずれ限界が来ます。自転車で旅をするということはとても大層なことで、非常にお金がかかります。巷で思われているイメージとは裏腹に自転車旅行は最も贅沢な旅なのです。

一方、自転車を健康づくりやトレーニングの道具として捉えた場合、大してお金はかかりません。もちろん初期投資はかかりますが、それだけです。物欲にかまけて機材に溺れることをしなければ、かかる費用は食費や消耗品費くらいのものです。

日常的に自転車をトレーニングの一環とする自走ライドにはドアtoドアの気軽さがあります。わざわざ高い金をかけて遠くへ走りに行かなくていいのです。そうやって体力をつけていけば、たまには知らない場所を走って成果を試してみようというのも悪くありません。旅はあくまでも「晴れの舞台」として取っておくべきです。旅が日常になってしまうと面白くも何ともありません。それが長年の経験から得た結論です。

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