北陸地方へ自転車なし旅行に行ってきました。訪れた場所を少し紹介します。
最初に歩いたのは北陸道最大の難所とされる親不知・子不知の険です。ここは北アルプスの北端が一気に日本海に没する場所で、垂直に近い断崖絶壁が数キロにわたって続いています。江戸時代まではここを通過するには波打ち際の絶壁に沿って歩くしか方法がなく、きわめて危険な行程でした。波にさらわれて命を落とす人も多かったと言います。
明治12年になって北陸本線の親不知トンネルが開通し、列車で往来できるようになりました。また明治16年には断崖上を切り拓いて道路が開設され、人が安全に通行できるようになりました。現在は使われていない親不知トンネルは歴史上の遺構として開放され、断崖上の道は親不知コミュニティーロードとして活用されています。この2つを合わせて約2キロの遊歩道が整備されているので歩いてきました。
GPSログはこちら↓
遊歩道のスタートは国道8号の天険トンネル東側にある駐車場からです。親不知観光ホテルが目印になります。
駐車場の東側にある階段を下っていきます。かなり急で海岸まで高低差80mを下ります。真ん中あたりにトンネルがありますが、とりあえずそれは後にして一気に海岸まで下ってしまいます。
海岸に出ると断崖絶壁が続いているのがわかります。波打ち際には波に削られて丸くなった石が堆積しており、とても歩けたものではありません。ここから西へ行くには後ろに見える断崖に張り付いて歩くしかなかったのでしょう。あまりにも危険すぎます。かの松尾芭蕉も奥の細道の旅でこの場所を歩いたとされ、とても感慨深いです。
海岸を見たらもう一度階段を登って途中にあるトンネルまで引き返します。開放されているトンネルの反対側にも旧北陸本線の遺構が残っています。
そしてこちらが遊歩道として開放されている旧北陸本線の親不知トンネルです。1912年に開通し、1965年に新線に切り替わるまで53年間にわたって使用されました。長さ約680メートル、レンガ造りで何と全て人力により開削されたものです。こういうのを危険だからという理由で何でも閉鎖しないで開放してくれるのはありがたいですね。
トンネル内には一応数十メートルおきにライトが設置されていますが、足元を照らすだけのもので真っ暗に近いです。ライトなしでは歩けないので、入口には貸し出し用の懐中電灯が用意されています。反対側で返却するシステムです。ただこういうのは暗いので、自前の自転車用ライトを持ってきました。
トンネルの床面には枕木の跡が残っています。
壁面が黒ずんでいるのは蒸気機関車の煙の煤です。
反対側に出てきました。ここからまた急な階段を登っていきます。
階段を登って道路まで出てきました。ここから親不知コミュニティーロードと呼ばれる道を歩きます。もとは明治時代に開削された断崖上の道が原型になっています。
コミュニティーロードに出ると日本海の眺めを堪能できます。
コミュニティーロードは歩行者と自転車だけが通れる遊歩道になっています。今でもサイクリストにとってこの親不知の区間は最大の難所であることに違いはありません。国道8号は数キロにわたって洞門が続き、大型トラックの通行も多いところです。しかしこのコミュニティーロードを利用すれば最も危険な天険トンネルを回避することができ、比較的安全に通行できます。トンネル入口にはそのように誘導する看板もあります。
絶壁の岩盤には「如砥如矢」の文字が刻まれています。これは「砥石のように平らで矢のように真っ直ぐ通れる」という意味で、街道開通の喜びを表したものです。
その少し先には東屋の展望台があり、眼下の日本海を眺められます。
展望台にはウォルター・ウェストンの像が設置されています。ウェストンはイギリス人の宣教師で、日本アルプスを世に紹介した登山家として知られています。この地も訪れていました。
展望台には親不知の地形模型も設置されており、かつて人々が歩いた道がいかに険しかったかを物語っています。上に見える水平な筋が新しい街道です。
展望台付近からは「四世代道路」を一度に眺めることができます。第1世代は江戸時代までの波打ち際、第2世代は明治時代に開削された断崖上の道(現コミュニティーロード)、第3世代は現在の国道8号線、そして第4世代はついに海上に迂回した北陸自動車道です。
この後、150mほどで駐車場に戻れます。別にどっち回りでもいいのですが、最後に展望台で親不知の全貌を学んだ方が感慨深い気がします。
コメント
紹介ありがとうございます。
国道8号線を渡ると、白馬岳に繋がる北アルプスを縦走出来る栂海新道の登山口があります。
いち個人が開削した貴重な登山道もご覧ください。
尚、山開きにはウエストンにちなみ「海の開山祭が行われます。
こんばんは。
展望台の解説板で小野健氏と栂海新道のことを知りました。壮大な道ですね。
ただ入口には気付いておらず、今Googleストリートビューで確認したところです。
いいですね。
ぜひ行ってみたいです。
4世代の道が一度に眺められるのは
圧巻ですね。
感慨深い光景です。
奥の細道にも描かれている歴史ある道です。
先人の苦労の跡を実感してみて下さい。