■コースタイム
不動谷林道登山口=0:40=太尾分岐=0:55=千丈平=0:20=釈迦ヶ岳=0:20=千丈平=0:45=太尾分岐=0:35=不動谷林道登山口【total 3:35】
大峰随一の秀峰として名高い釈迦ヶ岳。憧れの山ではあったが、前鬼口からは行程が長く、日帰りは無理とあきらめていた。しかし、NIFTYのFYAMATRKで十津川側の旭口から何と2時間足らずで登れることを知り、一気に行きたくなってしまった。これから梅雨に入るので秋になったら行ってみようと思っていたが、折しも今日は絶好の好天に恵まれ、早くも実現してしまった。
天理を午前5時に出発して旭橋に着いたのは午前7時10分頃。そこからダム湖沿いの細い道に入って奥吉野発電所を過ぎ、林道栗平線に入る。すぐ地道になるが路面の凹凸は少なく走りやすい。また舗装になったかと思えば再び地道になる。林道分岐を過ぎてからはずっと舗装路が続き、しかも上に行くほど道幅が広くなって走りやすい。はっきり言って拍子抜けするくらい立派な道だった。これは大台ヶ原ドライブウェイと同じではないか。途中、木材を積んだトラックとすれ違うのに苦労した以外は何の問題もなく登山口に着いたのであった。しかしここで失敗をして、何と登山口を通り過ぎてしまう。「釈迦ヶ岳登山口」と書いてあったのには気づいたが、その標識がさらに上を指しているように見えたのと、前の車につられてさらに上ってしまった。やがて再び地道に変わり、さらに石がゴロゴロの道になっておかしいことに気づき、引き返す。前の車も立ち往生して引き返してきた。結局、登山口の駐車場に着いたのは8時を少し回ってしまった。今日は天気がいいのに意外と車は少なく、5台くらいしか停まっていない。
8時25分に登り始める。階段を登ってすぐに不気味なほどに暗い杉林の中を通る。一人では心細くなるほどだ。しかし植林帯もあまり長くは続かず、やがて明るい感じのジグザグ道となる。石などは少ないので歩きやすい。ところどころガレている箇所があるので要注意だ。登り始めて30分ほどで駐車場を見下ろせる場所に出る。こうやって見るとまだあまり登っていないように見える。そこからまもなく尾根筋に出て、太尾からの道と合流する。聞いたところによると、あの林道をさらに上って尾根まで出るともっと楽に登れる道があるらしい。それがどうやらここに出てくるのだろう。しかしそこまでズルしてしまっていいのだろうかと思う。
明るい尾根道を行く
大日岳を望む
尾根筋に出るとブナの大木が目立つ自然林となる。このあたりは全く手つかずの自然という感じだ。下界ではすっかり緑が濃くなってしまったが、この辺はまだ新緑が鮮やかである。尾根筋は急な登りもなく、快調なペースで進む。登るにつれて木が少なくなり、代わりにバイケイソウが目立ってくる。今日は天気も最高で、明るい尾根上の道は実に気分がよい。ところどころで展望も開けて写真を撮りながら小休止する。時々右手に見える槍ヶ岳のような岩峰は大日岳だろうか。ここから見るとすごい鋭角だ。やがて正面に釈迦ヶ岳らしいピークが見えてくる。まだかなり高度差がありそうだ。古田ノ森のピークを過ぎると一旦下りとなり、いよいよ釈迦ヶ岳の山頂が大きく見えてくる。濃い緑の針葉樹林の中に新緑の広葉樹が混じり、堂々たる風格を見せる。ここから広々とした笹原の中を通り、もうひと登りで千丈平に着く。
釈迦ヶ岳山頂を望む
千丈平はびっしりとバイケイソウに覆われた平地で、標高は1700mである。キャンプもできるように整地されて木の枠で囲ってある。ここでうっかり深仙宿への道に入ってしまい、道が下っているのでおかしいと思って引き返す。左上の方に人がいるのが見えたので、そちらが釈迦ヶ岳への道のようだ。正しい道へ入るとすぐ水場があり、水筒の水を入れ替える。ここからはほぼ直登気味に結構登らせてくれる。15分ほどで前鬼からの道と合流し、さらに5分ほどで一気に頂上に出る。時間は10時20分。
釈迦ヶ岳山頂
山頂に着くとすでに4~5人が休憩していた。白装束の行者さんもいる。山名の由来となった青銅の釈迦如来像はずいぶん大きく、ほぼ等身大くらいありそうだ。大変柔和なお顔が印象的である。いったいどうやって担ぎ上げたのだろうかと驚いてしまう。人間一人ではとても持ちきれない重さだろう。山頂からの展望はうわさに聞く素晴らしさで、四方のパノラマを欲しいままにできる。特に今日は6月としては非常に空気が澄んでいて、遠くの山まではっきり見渡せる。やはり一番目立つのは孔雀岳、仏生ヶ岳から八経ヶ岳へと続く大峰主稜線だろう。4年前に登った八経ヶ岳を懐かしく思い出す。弥山と仏生ヶ岳の間には山上ヶ岳も顔をのぞかせる。弥山の巨大な山体にさえぎられて稲村ヶ岳は見えない。東側には大台ヶ原、西側には奥高野の山々がくっきりと見える。南側には南大峰の山々や紀州の山々が延々と横たわるが、この辺の山になるともはやどれがどの山なのかさっぱりわからない。南側はゴツゴツとした山が多いのが目立つ。どこまでも果てしなく続く山また山の波。紀州の山深さを実感する。あと意外だったのははるか北の方に街並みが見えることである。おそらくあれは五條の街並みだろう。ということは五條からこの山が見えるということで興味深い。
八経ヶ岳・弥山を望む
大台ヶ原を望む
まだ時間が早いが、朝が早かったので山頂で昼食にする。写真を撮っていた同じくらいの年格好の人に聞いてみると、前鬼から3時間半で登ってきたということだった。自分は旭口から2時間足らずで登ってきたと言うと、やっぱりその人も知らなかったと言っていた。山頂にはシロヤシオツツジが多く、白い可憐な花を咲かせている。今日も下界では暑そうだが、ここには標高1800mの涼風が吹き渡る。正午前になるとにわかに人が多くなってきた。あまりにも天気がいいのでなかなか立ち去りがたい。結局2時間近くも山頂で休憩して、12時5分にやっと下山の途についたのであった。
帰りも千丈平で水を補給してから下る。まだ時間が早いので登ってくる人が多い。尾根筋では早くもセミの声が聞かれる。少し暑くなってきた。下りはあまり写真も撮らずにひたすら歩いたが、それでも上りと大して時間は変わらず、登山口まで1時間40分かかった。駐車場に戻ってくると少しだけ車が増えているが、まだまだ余裕はありそうだ。午後1時55分に登山口を後にして、天理に着いたのは午後5時前。結局、歩行時間が3時間半、車を運転していた時間が往復6時間で、車を運転している時間の方がはるかに長いのであった。