晩秋の錫杖ヶ岳

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登山

■コースタイム
下之垣内登山口=0:40=福徳道分岐=0:30=錫杖ヶ岳=0:10=落合道分岐=0:40=落合登山口【total 2:00】


 安濃ダムの付近からひときわ目立つ鋭鋒の錫杖ヶ岳。標高こそ低いが山頂は岩峰で360度の展望が得られるというので一度登ってみたかった。錫杖湖からの道は非常に近接した二つの登山口があり、一つの登山口は容易に見つかった。大きな木の案内板があって「Aコース:上り1時間20分」と書かれている。Bコースと呼ばれるもう一つの登山口はそこから川の上流へ5分ほど歩いた寺の横にあるらしい。Bコースの方は階段が多くて歩きにくいと書かれているので、とりあえずメインの道と思われるAコースから登ることにする。駐車場所は登山口から橋を渡った向こうに8台くらい置けるスペースがあり、すでに先客が5台ほどいる。ここに置けばどちらの登山口からも近い。


錫杖湖畔から見た錫杖ヶ岳

 10時15分に下之垣内登山口を出発する。初めは軽四輪が通れるくらいの荒れた林道となっている。すぐに地元の人と思われる中高年のグループを追い抜く。15分ほど歩くと林道が途切れ、小さな標識に導かれて左の登山道へ入る。杉の植林の中をジグザグ気味に登っていく。林道の終点から10分ほど登ると滑滝状の沢を渡る地点がある。そこを渡るとますます勾配がきつくなり、本格的な上りとなる。ずっと植林の中で味気ないが、それほど暗くはないので気分はよい。11月下旬とはいえ、登っていると暑くて汗をかく。時々木の間から見える稜線はまだずっと上だ。あえぎ登るような急坂をまだかまだかと登っているとようやく稜線が近づいてきて、尾根のT字路に出た。右へ行くと福徳を経てJR関駅、左へ行くと山頂である。標識には山頂まで30 分と書かれている。

 T字路を左にとり、少し下ってまた急登が始まる。ところどころもろい花崗岩質になっており、滑らないように気を使う。尾根道にはわずかながら紅葉したカエデもあって写真を撮る。そして樹林が途切れていかにも山頂と思われる場所が見えたので急いで登ったが、そこに着くとまだずっと上に鋭鋒の山頂が見えてがっかりさせられた。実はここで初めて山と渓谷社の分県登山地図「三重県の山」の記述に一部誤りがあることが判明したのである。というのもこの本の地図には直接山頂に至る落合道の方に「滑滝を渡る」の記述があったので、てっきり自分は落合道を登っているのだと思い込んでいたからである。もし落合道を登っているなら尾根に出てから山頂まではすぐのはずである。しかし山頂まではまだかなり距離があることから、これは東側の尾根を経由する方の道であることがはっきりした。ということは案内板に書かれていた「Aコース」というのが尾根経由の道であり、「Bコース」というのが落合からの道ということになる。

 その小さなピークを過ぎてもなおも上りは続き、さらにきつくなってくる。しかしこの尾根道はなかなかいい雰囲気だ。南側は植林されているのに対し、北側が自然林となっていて面白い。ほとんど葉を落とした樹木が青空に映えて美しい。やがて木のベンチとテーブルが現れて落合からの道と合流する。あとは山頂までわずかの距離だ。しかし鋭鋒だけあってここからの上りがまたきつい。見上げるような階段道がしばらく続く。そして屋根が半分壊れた休憩所を右に回って最後の上りとなる。岩をよじ登るようにしてようやく山頂にたどり着いた。


鈴鹿方面を望む

 登っている途中はあまり人に会わなかったのに、山頂は人でいっぱいである。ちょうど昼時とあって座る場所を探すのも大変なくらい。マイナーな山にしては大変な人出だ。狭い山頂は岩石が累積していて視界をさえぎるものは全くなく、360度の大展望が楽しめる。南側には経ヶ峰の大きな山塊が横たわり、その向こうには平べったい青山高原が続いている。北側には入道ヶ岳、仙ヶ岳、鎌ヶ岳、御在所岳、雨乞岳といった鈴鹿の山々が遠く見渡せる。眼下には関や亀山の市街地がきれいに見える。空気の澄んだ日には何と木曽御岳まで見えるそうだが、今日は霞がかかっていて伊勢湾さえ見えない。この展望の良さがあるから人気のほどもうかがえる。山頂で昼食をとったり、写真を撮ったりして1時間あまり滞在したが、下山する人がいる一方、次々と登ってくるのでいっこうに人は減らない。あまりの人の多さに辟易して12時50分に下山を始める。


錫杖湖を見下ろす

 ベンチのある分岐点まで下り、同じ道を下っても面白くないので今度はBコースと称する落合道を下ることにする。標識の通り、いきなり急勾配の階段が現れる。ぐんぐん高度を下げて稜線が高くなっていく。こちらもずっと植林の中で面白くはない。しかしこの道は非常によく整備されていて、平坦な部分以外は完全に階段化されている。ところどころにベンチが設けられ、山頂までの距離を示す立派なプレートがあったりする。もっと下の方へ行くとガードレールまで付けられていて遊歩道のような雰囲気である。それにしてもこちらの道はよほど人気がないのか全く人に会わない。案内板に「階段が多くて歩きにくい」と書いてあったからだろうか。確かに上りはともかく、下りの階段は足にこたえる。しかし道としてはこちらの方がずっと立派なはずなのに、Aコースがメインになっているのは何とも不思議なものである。いやというほど階段を下らされて、寺の屋根が見えてくるとようやく登山口に出た。確かにAコースに比べると入口はわかりにくいと思う。13時40分に下山終了。標高の割にはしんどい山であった。

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