自転車という趣味はある程度体力がないと楽しめません。一般人から見れば100km走ってきたとか、標高1000mの山を越えてきたと言えば驚かれますが、そういうのはサイクリスト的な視点から見ればまあ当たり前のことなんです。基本的にそのくらいの体力はあることが前提。
しかし自転車というものは継続的に乗ってないと体力を維持することが難しいのです。最低限の体力を維持するためには、少なくとも2週間に1度はそこそこの強度のライドをこなす必要があります。これが1ヶ月以上乗らない期間が続くと目に見えて体力が衰えるようになり、3ヶ月も乗ってないともう一般人と変わらないレベルまで落ちてしまいます。そうなるとできることがどんどん少なくなっていくわけです。
継続を阻む壁
そんなことはわかり切っていても、現実的には乗り続けることは難しいのです。自転車の大敵は冬と雨です。アウトドアスポーツは常に気候天候に左右されます。これが定常的に乗り続けることを阻む最大の障害となります。この悪条件を乗り越えるには強靭な精神力が必要で、よほどの目的意識がなければもっともらしい理由を付けて休んでしまいます。そしてダメダメになっていくわけです。
サイクリストには二種類しかない
サイクリストには実は二種類のタイプしか存在しません。一つは冬の寒い時も夏の暑い時も関係なく乗り続けるタイプ。さすがに大雨なら走らないでしょうけど、途中で雨に降られるかもしれない程度なら走りに行っちゃうことも少なくありません。こういうタイプは走りたい意欲が非常に強く、少々の困難があってもライドを優先します。通年で乗れているから体力が衰える暇がありません。最低でも現状維持、さらに伸びていくことも十分可能でしょう。こういうタイプこそが本物のサイクリストであり、ここではタイプAと呼ぶことにしましょう。
もう一つは冬の寒い時はもちろん、夏の暑い時も全く乗らないというタイプです。冬の辛さは言うまでもないですが、最近の夏は殺人的な暑さですからね、とても自転車に乗れるような気温じゃないのです。要するに春秋の気候の良い時しか乗らないご都合主義。もちろん雨が降りそうな時は絶対乗りません。こういうことをやっていると毎年4~5ヶ月のブランクが空くわけで、体力は一気にガタ落ちします。それを取り戻すのにまた1年かかります。だから体力が向上するということは絶対になく、失っては戻すの繰り返しになります。こういうタイプは都合のいい時しか乗らないという意味でなんちゃってサイクリスト、あるいは似非サイクリストと言うべきなのです。ここではタイプBと呼ぶことにしましょう。
ちなみに自分は言うまでもなくタイプBです。異論の余地はありません(笑)。
自転車に乗れるのは年に25日しかない
では一般的に自転車は年に何日くらい乗れるのか考えてみましょう。ここでは自分のようなヒマ人は別として、土日が休みの一般的なサラリーマンとします。
まず土日が休みと言っても他の用事もあるでしょうし、連続で乗るのは体力的に厳しいですから、乗れるのは土日のどちらか1日となるでしょう。すると祝祭日を含めても1ヶ月で乗れるのは平均的に5日程度となります。でも実際には雨で潰れることもあるでしょうから、これより減る可能性もあります。
次に一年のうちで自転車に快適に乗れるのは何ヶ月あるか考えてみます。まず冬の12月~2月を除き、梅雨と真夏と残暑の6月後半~9月前半を除きます。さらに花粉症の人は春もダメと言うでしょうから3月も除きます。そうすると快適に乗れるのは4月~6月前半、9月後半~11月の計5ヶ月しかないわけですよ。花粉症でなかったとしてもせいぜい6ヶ月です。
結局、自転車に快適に乗れるのは5ヶ月✕5日で25日しかないのです。少ないと思われるかもしれませんが、最大限に見積もってもそのくらいしかないんですよ。そのうち雨に当たってしまったらさらに減る可能性があります。
これはもちろんタイプBの場合で、タイプAの人にとってはそんなの関係ね~という気持ちでしょう。しかしこれ以上に日数を増やそうとすると相当な努力を必要とするのです。まず土日のライドだけでなく平日も朝練したりローラーを回す必要があるでしょう。あるいは毎日20km以上を自転車通勤するかのいずれかです。当然、寒い日も暑い日も関係なしです。これを実行するには強い精神力が必要で、自転車に全てを注ぎ込むくらいの情熱がなければできません。タイプBの人間はメンタルが弱いので、こういうことを一番苦手とするんですね。
サイクリストが陥りやすい落とし穴
自転車趣味を楽しむためには体力が必要ですが、その体力を維持するためには継続的に運動することが要求されます。しかし多くのサイクリストが無意識に犯している勘違いがあります。それは、自分は自転車に乗っているから体力維持はできているという思い込みです。これはダイエットについても言えますが、自分は自転車に乗っているからダイエットはできている、太らないとなぜか思い込んでいます。
でもこれを言っていいのはタイプAの人だけなんですよね。寒い日も暑い日も関係なく、毎日朝練までして乗っている人なら胸を張って運動していると言っていいでしょう。しかしタイプBの人は気候のいい時だけ、気の向いた時だけしか乗らないので、継続的に運動しているとはとても言えません。上で考えたように、1年で自転車に乗れるのは最大でも25日しかないのです。年間でたった25日しか乗らないのにそれで運動していると言うのはおこがましいにも程があります。たまにガーッと100kmくらい走ることはあっても、一度休むと3ヶ月乗らないとか、それでは何もしていないのと同じです。
だからタイプBの人は自転車で体力を維持しようというのは虫が良すぎるんですね。自転車に乗っているから体力を維持できていると安心していたら、確実に体力は落ちています。ダイエットも同じで、自転車に乗っているから太らないと安心していたら確実に太ります。実際は運動してないに等しいのだから太るのは当たり前です。断言しますが、自転車に乗っても絶対痩せません。自転車で痩せられるのはタイプAの人だけです。
自転車で体力を維持するのは効率が悪すぎる
ここまで書けばもうおわかりかと思いますが、自転車で体力を維持するにはタイプAになるしかないのです。そのためには寒さも暑さも厭わず、わずかな隙を見つけて少しでも自転車に乗るストイックさが求められます。へなちょこが持ち前のタイプBの人間にそんなことができるでしょうか? タイプBは自転車を娯楽としてしか捉えていないので、しんどいことが何より嫌いです。自転車に乗ることが三度の飯より好きくらいでないとタイプAにはなれないのです。
そして最も深刻な問題は、自転車は時間を食うということです。軽いライドでも半日くらい、がっつり走れば丸一日は潰れますね。タイプAの人は自転車に乗っていること自体が幸せなので無駄だとは感じないかもしれませんが、年間でトータルすると莫大な時間を自転車に費やしているわけです。人生の時間は有限です。それだけの時間があればもっといろんなことができたでしょう。自転車で体力を維持するということは、持ち時間を全て自転車に注ぎ込むくらいの覚悟が必要なのです。つまり自転車で体力を維持するのは時間効率が非常に悪い、今風に言えばタイパが悪いということですね。
自転車以外で鍛える
これからの時代、タイパが最も重視されると思うんですよね。誰にとっても時間は有限ですから。そのためには体力の維持もできるだけ短時間で効率よく行うことが望まれます。そこで発想を転換し、自転車以外で体力維持する方法を考えましょう。
まあ最も手軽にできて運動強度が高いのはランニングだと思いますが、自分はしんどいのが嫌いなのでやりたくありません(笑)。その代わりに32歳の時から水泳を始めました。きっかけは自転車はいくら乗っても痩せないことに気づいたからです。当時人生で最高に太っていて、さすがにこれはヤバいと思いました。ダイエット目的ならジムトレとかもあると思いますが、自分はどうもああいう「運動のための運動」みたいなのが苦手で、進まないバイクに乗って何が楽しいんだよと思ってしまいます(笑)。
なぜ水泳だったのかと言うと、自分は全く泳げなかったからです。いわゆるカナヅチ。だから泳げるようになりたかったのです。最初は何度も溺れながら死ぬほど練習しました。そしてわずか3週間で25m泳げるようになりました。それは不可能が可能になった瞬間でした。それからというもの、泳げるということが嬉しくてどんどん不可能を可能にしていきました。1年くらいで4泳法全部できるようになったし、コーチからは上達が早いと言われました。運動音痴なのに(笑)。体重は一気に10kg落ちました。今では泳ぐのは歩くのと同じになり、時間さえかければ何百メートルでも泳げますし、50mを軽く1分以内では泳げます。それでもまだまだ新しい発見があるんですよね。水の抵抗は空気の800倍も大きいですから、わずかなフォームの変化でタイムが劇的に伸びたりします。改良に改良を重ねた結果、より少ないエネルギーで速く泳げるようになるのです。これでもう終わりということはありません。常に1秒でもタイムを縮めるために改良は続きます。だからこそ26年間も続いているんですね。
自分では無理してやっているという意識は全くなく、ただ楽しいからやっていただけですが、気がついたら平均的なサラリーマンより体力は上になっていました。今から思うと、もし水泳をやっていなかったら相当ヤバかったんじゃないかと思います。おそらくメタボまっしぐらで成人病予備軍、体力はガタ落ちになっていたことでしょう。これは脅しじゃないですが、自転車に乗っているからと安心していたら必ずそうなりますよ。
水泳をやったおかげで心肺と筋力と体幹を同時に鍛えられました。それはもちろん自転車にも生きてきます。心肺能力さえあれば余裕がありますから、激坂でも時間さえかければ登れるんですよ。速くはないですけど。これを自転車だけでやろうとするとものすごく大変で時間がかかるので効率は悪いです。
できるだけ室内でできる運動が望ましいですが、まあランニングでもジムトレでも登山でも何でもいいんですよ。要は自分が楽しいと思えて、それ自体が目的になることが理想です。楽しいことなら自然と続けられるし、楽しくないことは続かないでしょ。
自転車と体力維持は分けるべし
サイクリストの習性として、自転車と体力維持を同時にやっちゃおうと考える人が多いですが、それは簡単なことではないんですよ。年間25日しか乗らないのに虫が良すぎるんです。やるなら冬も夏も関係なく、ほぼ毎日乗り続けなければ意味がありません。
そこまでやるのは時間的にも厳しいので、自転車は娯楽と割り切り、体力維持は季節に依存しない方法で行うことが時間効率の観点からベストじゃないかと思います。
何が何でも自転車が最高という考えは捨てた方がいいですね。実際、やり始めたら楽しくてランニングや登山に転向していく人は多いんですから。
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