貧脚の欲望はとどまるところを知りません。去年はスプロケを11-34Tに交換してギア比1:1を実現しましたが、それに慣れてしまうともっと軽いギアが欲しい、もっともっと‥となるわけです(爆)。
ギア比を下げるにはスプロケを交換するのが手っ取り早いですが、それには限界があるし、ワイドレシオ化の弊害として歯数の飛びが大きくなってしまいます。一方、チェーンリングを小さくすると全体に軽くなるので使えるギアが増える。本来はこれが理想的な方法です。
まあインナー34Tは良いとして、アウター50Tというのはどう考えても大きすぎますよね。50Tなんて貧脚には踏めるわけがない。せっかくリア9速あっても実質7速しか使えないんですよね。
しかしシマノにはこれより小さいクランクがないのです。何を考えてるんだよシマノさんよ? ないものを嘆いても仕方がない。そこで困ったときの中華頼みですよ(笑)。
これはちょっとイレギュラーな方法なのでうまく行くか自信がなかったのですが、問題なく使えることがわかりましたので覚え書きとして残しておきます。貧脚でお悩みの方の参考になれば幸いです(笑)。
クランクの入手方法
アリエクスプレスで購入しました。昔は怖くて使ってなかったのですが、流行に乗り遅れまいと去年から使い始めました。3回ほど購入したら抵抗がなくなりました(笑)。アリエクは楽天市場と同じようなシステムで、場所だけ提供して個々のストアが販売するスタイルです。だからストアによって当たり外れがあります。未だにゴミが送られてくるなどのトラブルはあるようですが(笑)、よほど変なストアから購入しない限り、ちゃんとした商品が届くと思います。ストアの評価をちゃんと調べれば問題なし! 最近は1週間前後で届くのでぐっと使いやすくなりました。
購入した商品はEVOSIDというメーカーのグラベル向けクランクです。本当なら46-30Tにしたかったのですが、FDが直付け式のため下げる余裕がほとんどないのです。それで無難に48-32Tで妥協しておきました。
アリエクから「EVOSID クランク」で検索すればたくさん出てくると思いますが、どこのストアから購入しても値段は大して変わりません。自分はちょうどセールで7,923円で買えました。クランクの歯数は48-32Tと46-30Tがあり、クランク長は165mm/170mm/175mmから選べます。さらにクランクの色はシルバーかブラックかのバリエーションがあります。
以下に商品のスペックを貼っておきます。
パッケージ内容
商品は元日に注文して8日に届きました。ちょうど1週間。国内での配送はヤマト運輸に委託されています。
こちらがクランクセットの内容。アリエクには珍しく箱に入ってました(笑)。シャフトの付いた右クランクと、左クランク、チェーンリング取り付けボルトの3点セットです。説明書も何も入ってませんでしたが、なぜかステッカーが付いてました(笑)。
こちらがチェーンリングのパッケージ。
裏面を見るとEVOSIDは台湾のブランドのようですね。製造は中国と書いてありますが。
これが48-32Tのチェーンリング。なかなかの質感で極限まで肉抜きされてます。
裏面を見てわかるように、アルミ削り出しでアウターとインナーが一体成形されており、個別に交換することはできません。ボルトがないから非常に軽いです。摩耗した時はユニットごと交換することになりますが、チェーンリングだけなら4,000円ほどで買えますので全く問題なし!
クランクはこのギザギザに合わせて取り付けます。向きは決まってますので間違えることもなく非常に簡単!
これが右クランクです。シャフトは高強度の7075アルミが使われており、非常に軽いです。シャフト径は左右ともに24mmとなっています(ここがミソ)。つまりシマノのホローテックIIと同じ規格です。
SRAMのGXP規格について
実はこのクランクがSRAMのGXP規格だということは注文してから知りました(笑)。てっきりシマノと同じ規格だと思っていたので。
GXP規格の仕組みを知らないとこの作業はできませんので、まずGXP規格について簡単に説明しておきます。GXPというのはSRAMが提唱したクランクとBBの規格で、シマノのホローテックIIと同じ2ピースクランクであることには違いありません。しかし左クランクの取り付け方法がシマノとは大きく異なります。
左クランクが取り付く部分はこのような形状になっています。シマノのオクタリンクとよく似た形状で8本の突起があり、わずかにテーパーが付いています。そしてシャフトの内側には左クランク側のボルトが入るネジが切られています。
この突起の部分に左クランク側の突起がかみ合って、中央のボルトを締め込むことによりクランクが圧入されます。これは早く言えばスクエアテーパーと同じ原理だということです。シャフトの横からボルトで挟み込むシマノの方式とは根本的に異なります。
そしてBBの規格も少し違いがあります。シマノのBBは左右ともに24mm径となっていますが、GXP規格では左右非対称になります。右側はシマノと同じ24mm径ですが、左側は22mm径という特徴があります。シャフトの先端部も22mm径となっており、途中で段差が付いています。この段差がBBに当たってそれ以上奥へ入らない構造になっています。
ですからSRAMのクランクをシマノのBBに取り付けようとすると左クランク側に隙間ができるのでガタが出てしまいます。そこでこの隙間を埋めるための変換アダプターも市販されています。
中華系のGXPクランクはちょっと特殊
ここがちょっとややこしいのですが、同じGXP規格でも本家SRAMと中華系では少し異なる部分があります。
上記の通り、右側が24mm、左側が22mmというのがGXP規格の特徴なのですが、実は中華系のGXPクランクはほぼ全て左右ともに24mm径になっています。これはシマノのホローテックIIと互換性を持たせるためです。そのため変換アダプターなしでシマノのBBに取り付けられるようになっています。
GXP規格のクランクは取り付けボルトが二重構造になっているのが特徴です。外側に大きなボルト穴があり、その中に8mmアーレンキーが入るボルト穴があります。本家SRAMのクランクでは外側のボルトは10mmアーレンキーで回せるようになっているようです。しかしこの中華系クランクでは外側のボルト形状が違います。よく見ると6角形ではなく8角形であり、直径は15mmもあります。これに合う工具はあるのかと思って調べてみましたが、そのようなものは見つかりませんでした。おそらくこれは工場出荷時に専用工具であらかじめ組み付けられていて触るなという意味なのでしょう。
実は外側のボルトは全く外す必要はありません。付けたままでOKです。クランクの取り付けも取り外しも8mmアーレンキー1本でできるのがGXP規格の特徴です。最近の人は触ったことがないかもしれませんが、外側のボルトはコッタレスクランク抜きと同じ役割を果たしているんですね。クランクを取り外す時は内側のボルトを緩めていくと、ボルトの頭が外側のボルトに当たってクランクが引き出されてくるという仕組みになっています。これはよく考えられているなと思います。
シャフトが長すぎる問題
GXP規格のもう一つの特徴として、左クランクの根元にアジャスターリングというものが付いています。これはクランクとBBの隙間を埋めてBBにピッタリ密着させるためのものです。
左クランクの根元に付いているのがアジャスターリングで、ネジが切られていて手で回せるようになっています。これはちょうどシマノのクランクキャップボルトと同じように、クランクのBBへの当たりを調整するためにあります。
ただこのネジは3mmほどしか動く余地がなく、本当に微調整程度しかできません。
ここで問題となるのは、購入したクランクの場合、シャフトが長すぎるということです。スペックによるとシャフトの長さは98mmと書いてありました。しかし現在付いているBBはプレスフィットのBB86規格。これはシェル幅が86.5mm、BBのフランジ間の距離が90mmと決まっています。ですからどう考えても8mm余ってしまうのです。こんなに長いのはおそらくMTB用の幅の広いBBにも対応させるためだろうと思います。
GXP規格の場合、左クランクが差し込まれる深さは構造上決まっているため、全体的な長さは常に一定で変えられません。しかしアジャスターリングだけでは3mmほどしか調整できないため、残りの5mmをどうにかして埋める必要があります。そこでクランクスペーサーというものを使用します。
クランクが到着後、寸法を実測してすぐにAmazonで注文しておきました。これはかなりニッチなパーツなので、さすがのAmazonでも2種類しか出てきませんでした。上記の他にもう一つ、1mm厚と0.5mm厚の各4枚セットもありましたが、少なくとも5mmは埋める必要があるため、厚めのスペーサーが入っているセットを選びました。1mm/2mm/3mmを組み合わせることにより、最大6mmまで隙間を埋めることができます。
クランクスペーサーを購入する際は、まず自分の自転車のBB幅を測って下さい。98mmからBB幅を差し引き、さらにアジャスターリングの調整分3mmを差し引いた残りが隙間となります。その隙間を埋められるだけのスペーサーを用意する必要があります。
右クランクの組立
クランクとチェーンリングは別体になっていますので、初めに右クランクを組み立てておきます。
チェーンリングの取り付けは、右クランクの根元にあるギザギザをチェーンリングと合わせてはめ込み、3本のボルトで固定するだけ。方向性があるので間違えようがない。シマノに比べるとめちゃくちゃ簡単です。なお取り付けにはT25のトルクスレンチが必要です。
ただ説明書が付いてないのでどのくらいのトルクで締め付ければいいのかわかりません。そこでネットで本家のSRAM製チェーンリングの画像を調べてみますと、8-9Nmという刻印がありましたので、だいたいそのくらいだろうと思って8Nmで締め付けておきました。
重量測定
クランクの組立までできたところでお待ちかねの重量測定ですよ(笑)。元々付いていたSORAのクランクと比較してみましょう。
SORAのクランクは何と967.7gもありました。あんたそんなに重かったんかい!(笑) 実に車重の1/10以上をクランクだけで占めていることになります。こんな重いもんくっつけて走ってたのか(笑)。磁石で調べてみたらシャフトとインナーが鉄でした。どうりで重いわけだ。
そしてEVOSIDのクランクは驚きの629.8gです。公称値よりちょっと軽いくらいですね。何とデュラエースのクランクより軽い!
クランクだけで338gも軽量化できました! あ、スペーサーの分を忘れてました。まあ実質330gってとこですね。これだけでも価値があると思います。
事前準備
さてこれから交換作業に入りますが、その前にやっておくことがあります。
まず交換前のチェーンラインを測っておきます。チェーンラインが大きく変わるとFDの調整範囲を超えてしまうため、できるだけ元の値に近付けるようにします。チェーンラインは本来アウターとインナーの中間で測りますが、それでは測りにくいのでフレームセンターからアウターの歯先までの距離を測ればいいでしょう。実測の結果、約48mmでしたのでこの値を覚えておきます。
ついでにQファクターも測っておきましょう。Qファクターとは左右ペダルの取り付け面の間の距離を指します。ロードバイクでは通常150mm前後です。これが広すぎたり、左右差が極端にあるとペダリングに違和感が出る恐れがあります。実測の結果、多少の誤差はありますが左右とも75mmで合わせて150mmでした。これはスペック通り。
クランク取り外しと仮組み
まず元のクランクを取り外します。チェーンは外してBB部に引っかけておくと切る必要はありません。実はホローテックIIのクランクを外したのは初めてでした(笑)。なるほど、こういう構造になっていたのか。クランクとBBの隙間に砂が溜まってジャリジャリになってましたので、きれいに掃除しておきました。
まずスペーサーを何も付けない状態で右クランクを差し込んでみます。ハンマーで叩いたりしなくてもスルスルと入りました。このときシャフト先端の出しろを確認しておきます。一応、段差のあるところまでクランクが入るのですが(アジャスターリングを含む)、そこからBB面までの距離を測定すると8mmありました。これは計算通り。
そして右クランク側のチェーンラインを確認します。すると約45mmと読めましたので、明らかに元のクランクより3mm近くなっています。これも想定通り。したがって右クランク側に3mmのスペーサーを入れてやると元通り約48mmになりましたので、これで確定します。
同様に左クランクのスペーサーも決めます。右に3mmスペーサーを入れると左の隙間は5mmになるはずです。このうち約3mmはアジャスターリングで吸収可能なので、最小2mmのスペーサーで行けそうです。ただその場合はアジャスターリングのネジ切り部分いっぱいまで繰り出さなければならないので、ちょっと余裕がない感じです。そこでもう1mm足して2枚のスペーサーを入れました。これで左右とも3mmのスペーサーが入ったことになります。なおスペーサーを入れても入れなくてもQファクターは変わりません。
クランクの取り付け
左右のスペーサー幅が決まったらいよいよ本組みを始めます。お約束ですが、シャフトのBBが当たる部分とクランクの嵌合部には薄くグリスを塗っておきます。もちろんボルトのネジ切り部分にもグリスを塗っておきます。
あとは左クランクを取り付けて8mmアーレンキーでねじ込んでいくだけですが、問題は締め付けトルクですね。ボルトには54Nmという指示がありますが、そんな高トルクを測れるトルクレンチは持っていません。スプロケの締め付けトルクが40Nmなので、だいたいそんなもんだろうと勘で締め付けておきます。要はクランクが奥まで入っていればそれで良いのです。あまり馬鹿力で締めると今度は外れなくなりますので、ほどほどに手で締められる程度にしておきます。ボルトで留まっているのですっぽ抜けることはないと思いますが、時々緩んでないか点検した方がいいでしょうね。
クランクを奥までねじ込んだら、最後の仕上げとしてアジャスターリングを回し、隙間がなくなるまでBB側へ押し付けます。これはシマノのクランクキャップと同じように、あまりきつく締めてはいけません。ベアリングが過度に押されて回転が渋くなったり、寿命を縮めたりします。隙間が完全になくなって軽く当たる程度に締め込んでおきます。締め付け位置が決まったら動かないようにT10のトルクスレンチで固定して完了です。上の写真が完成後の状態で、2mmと1mmのスペーサーが入り、アジャスターリングとクランクの間には約2mmの隙間があります。これで計算通り。
完成後にQファクターを測ってみると、右が75mm、左が78mmで合わせて153mmでした。グラベル用なんですが意外とQファクターは狭いですね。左右でやや不均一ですが、右クランクをこれ以上外へ出すとFDの調整が厳しくなるので、このくらいは誤差の範囲ということでいいでしょう。
フロントディレイラーの調整
クランクを交換したら最後にやることはFDの再調整です。チェーンリングが小さくなった分、FDを下げる必要があります。バンド式のFDならいくらでも下げられますが、直付け式は調整範囲が決まってますので初めに下げる余地があるか確認して下さい。
結果的に約5mm下げればOKでした。まだもう少し余裕がありますが、さすがに46-30Tは無理でした。
直付け式の場合、サポートボルトというものが付いていて、それがフレームと当たる部分に保護プレートが貼ってあります。FDを下げるとその位置をはみ出してしまうため、保護プレートを剥がして貼り直す作業がちょっとだけ面倒でした。
FDの可動範囲調整自体はもともとチェーンラインを合わせてあったので、それほど大きく調整する必要はありませんでした。
試運転と感想
これで室内で調整してうまく変速することは確認できましたが、いきなりロングライドしてトラブったら困りますので、一応近所で実走して最終確認をしておきました。
結果的に変速はスムーズに動作しており、変な音鳴りとかもありませんでした。今のところノープロブレムです。最小ギア比は32T×34Tで0.94となりました。これで坂がどのくらい楽になるかは激坂を登ってみないとわかりません。しかしアウターが48Tになったので、使える速度域が増えました。さすがに11Tは無理ですが、13Tまでは使えるので実質8速です。最も多用する中速域もつながりが良くなるため、良いことずくめです。
クランクはロードバイクの顔と言われるように、交換するとガラッと雰囲気が変わりますね。極限まで肉抜きされた芸術的な美しさも気に入っています。質感も非常に良くて、これが8,000円の商品とはとても思えません。最近の中華はレベル高いです。個人的な意見ですが、シマノの4アームクランクはどうも美しくないんですよね。特に裏から見ると汚い(笑)。クランクはやっぱりシンプルな見た目がいいと思います。
持ち上げた感じも明らかに軽いのがわかります。これで本体のみ8.3kgは行ったと思います。これを経験しちゃうとグラベルロードもやりたくなりますね(笑)。まあできることはわかったのでそのうちに。
これで余ったSORAのクランクをミニベロに移植してやろうと思ってたのですが、この重さを知ってしまうとやる気がなくなりました(笑)。やっぱりミニベロにも軽いのを付けたいですよね。
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