続・ネガのスキャン

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ネガのスキャンはこれまでにほとんど経験がないため、にわかにやろうとしてもなかなかうまく行かないものです。以前の記事で晴れてるときはうまく行くが、曇ってるときは色が出ないとか悩んでました。それは結局、露出不足が原因だろうということに落ち着いたのですが、実はそうではないことがようやくわかりました。

参照記事
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ネガのスキャンは難しい

実際、ネガを見ても濃度は十分にあり、シャドーの部分も完全な素抜けにはなっていません。適正露出のネガからうまくスキャンできないというのは、やはりスキャンのやり方に問題があるだろうということになります。ここで一つ思わぬ落とし穴があったことに今まで気付きませんでした。それは「空の階調」です。


白い曇り空が画面内にあり、地上の風景に露出を合わせた場合、デジカメなら空が真っ白に飛んでしまうのが普通です。これはリバーサルでもほとんど同じです。ところがカラーネガのラチチュードは非常に広いため、地上に露出を合わせても空の階調はちゃんと残っているのです。これをスキャナの自動露出に任せてスキャンすると、空と地上の両方の階調を残すように調整されます。

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自動露出後、白点と黒点がヒストグラムの両端になるようにマニュアル調整しました。ここでヒストグラムの右端に大きなピークがあることに注目して下さい。これは空の部分の階調が残っていることを示します。このように曇り空が画面内に入るシチュエーションでは、ヒストグラムは2つの山を持つのが特徴です。

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上の状態でスキャンすると、空の階調は残っていますが、全体的に暗く沈んだ画像になってしまいます。これは空の階調を含めて無理やりディスプレイの階調に収めようとしたため、結果的に地上の階調が圧縮されて暗くなってしまったわけです。つまりディスプレイの階調再現域はカラーネガのそれに比べてはるかに狭いため、もともと両方を共存させることは不可能なのです。これは紙にプリントする場合でも同じです。

histogram070209-2
次に空の階調を残したまま、無理やりガンマを上げて地上の部分を明るくしてみました。

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しかしこれでは空の階調は残っているものの、全体に白っぽく眠い画像になってしまいます。まるで安物の同時プリントを見ているようです。

このようなケースでは空と地上の両方を生かそうとするのはもともと無理で、表現意図に合わせてどちらかを切り捨てなければなりません。この場合は地上の風景が主体ですから、空は別に白く飛んでしまっても構わないわけです。逆に雲の表情を出したいのならシャドー側を切り詰めるべきです。

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そこで、白点を左へ移動させてそれより右側の部分を真っ白に飛ばしてしまいます。どのくらい空の階調を残すかはプレビューを見ながら調整します。ここではわずかに空の階調が残るように調整してみました。

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それでスキャンした結果がこの写真です。最初の写真に比べて地上の風景が明るく、しかもメリハリのある画像になったことがおわかりでしょうか?

このようにヒストグラムの山が2つに分かれる場合、カラーネガのラチチュードがあまりに広すぎるため、それをすべて取り込もうとしてもうまく行きません。こういう場合はどっちかを切り捨てるしか仕方がないのです。

カラーネガが持っている情報量というのはそれだけ豊富であるわけで、カラーネガで撮影してデジタル化するというハイブリッド・フォトの手法は案外奥深いのではないかと思いました。デジタル化したデータを写真屋へ持って行けばデジカメプリントもできるわけですから、思い通りの色が出ないと悩んでいる人は試す価値があるんではないでしょうか?

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